日本作物学会紀事
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灌水と摘葉がダイズの光合成・蒸散および収量に及ぼす影響
島田 信二国分 牧衛芝田 英明松井 重雄
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1992 年 61 巻 2 号 p. 264-270

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抄録
葉面積の拡大は作物のCO2固定能力を増大させる一方, 蒸散の増大を招き, 水ストレスを引き起こしやすくすると考えられる. そこで, 葉面積と水分供給量の組合せ効果がダイズの葉のみかけの光合成速度(AP)および収量に及ぼす影響を明らかにするために, ポット栽培したダイズに灌水処理と摘葉処理をそれぞれ3水準ずつ組み合わせて, 開花後約2週間目から成熟期まで処理を行い, 作物体の光合成, 蒸散および収量に及ぼす影響を検討した. 灌水量が少ない場合, 個体当りの蒸散量(Tr/P)は葉面積の大小にかかわらず灌水量とほぼ同等になり, それは気孔コンダクタンス(gs)によって調節されていた. 灌水量が十分にある場合, Tr/Pは葉面積の増大に伴い増大した. 灌水量が多いほどgs, APが高かった. 一方, 灌水量が少ない場合は摘葉程度が大きく葉面積が小さいほど葉身の水ポテンシャル(Ψl)が高く維持され, gsが増し, APも高かった. 継続的な水ストレスは登熟後期の葉緑素含量, 光合成能力を低下させた. 灌水量が多い場合, 子実重は葉面積と相関が高く, 葉面積が大きいほど多収となったが, 灌水量が少ない場合は葉面積が収量へ及ぼす影響は認められず, 灌水量が収量規制要因となっているように思われた. 以上からダイズで多収を得るためには, 葉面積の確保だけではなく, 葉面積に見合った十分な水分供給を行い, Ψlを高く維持し, 光合成能力を高く維持することが必要であると考えられる.
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