日本作物学会紀事
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トウモロコシ幼植物の種子根の生長と13C標識光合成同化炭素の分配に及ぽす光強度の影響
巽 二郎遠藤 伸子河野 恭廣
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1992 年 61 巻 2 号 p. 271-278

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抄録

光強度がトウモロコシ幼植物の種子根の生長と光合成同化炭素の分配に及ほす影響を~<13>Cをトレーサーとして調べた. 特に, 根軸に沿った種子根の根軸と側根に着目した. 2日間遮光処理したトウモロコシ(光強度を対照区の57%または25%に低下)に13CでラベルしたCO2を2時間にわたって供与した. その後3日間にわたって種子根の生長と体内での13Cの動きを追跡した. 遮光処理は13C同化時ならびにその後の実験期間中継続した. 種子根の伸長速度は遮光の影響を受けなかったが, 種子根軸上の総側根数・長は顕著に減少した. 種子根軸に沿った, 根端より10-30 cmの部位では第1次側根長(L型+S型)の, 同じく30-基部の部位では第2次側根の減少が生じた. これとは対照的に根端より10cm以内では, S型側根数の著しい増加がみられた. 同化後1日目における側根への13Cの分配は, 対照区と比較して低下したが, 種子根軸では逆に増加した. 側根への13C分配の減少は側根の生長の減少と対応していた. 根軸への13Cの分配の増加は, 特に根端および根端から10cm以内の部位で顕著であり, この部位での側根の生長促進, 根軸伸長の維持と対応していた. 以上のように, 種子根を構成する各部位の, 遮光に対する生長反応とそこへの光合成同化産物の分配の様相が, 平行的であることが示された.

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