日本作物学会紀事
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水稲圃場試験調査法の改善のための基礎研究 : 第3報 量的形質の標本調査における各種標本抽出法の精度
楠田 宰
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1992 年 61 巻 3 号 p. 412-418

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抄録
標本調査では標本をランダム抽出するのが原則であるが, 調査労力や試験区面積の制約などから, 標本をシステマティックに抽出する場合が多い. しかし, このような抽出法により得られた標本平均値の精度と, 同じ標本数をランダム抽出した場合の精度との差異については, 収穫期の坪刈り調査を除いてほとんど明らかにされていない. そこで, 最高分げつ期および穂揃期の茎数・穂数・生体重を対象として, 各種の抽出法によって得られた標本平均値の精度を標本数が20株の場合について調査, 解析して, 調査の精度の確保と効率化の面から有効な標本抽出法について検討した. 手植え試験区では第1に, 最高分げつ期, 穂揃期の量的形質の株間変動の様相は, 条方向で大きく条間では小さかった. このために, 条方向に少数の標本を抽出する方法は精度が悪く, 条方向に多数の標本を抽出する方法は精度が高かった. 第2に, 試験区を条方向, 株方向ともに二等分して4ブロックに分け, 対角に位置する2ブロックからそれぞれ条方向に連続した10株を抽出する方法は, ランダム抽出とほぼ同等の精度が安定的に得られ, 労力的にもランダム抽出に比べると省力的であり, 有効な抽出法であることが分かった. 調査対象形質の変動係数が小さい穂揃期には, 条方向に連続した20株を抽出する方法および条方向に連続した10株を抽出した後に, 左右どちらかの隣接条に移動してそこからさらに条方向に連続した10株を抽出する方法が, より簡便で精度も比較的に高く, 有効な抽出法であった.
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