抄録
産地が明らかな内外の水稲品種について, 食味と穀粒成分および炊飯米のアミノ酸を分析し, 両者の関係について検討し, 次の結果を得た. 1)食味の評価は本学5月祭の見学者による官能テストによった. 平均値でみると穀物検定協会のパネルによる評価の序列と一致した. 2)穀粒成分の面では良食味品種はアミロース, 窒素ともに低いが, 食味の劣る品種にはアミロースが高い場合, 窒素が高い場合, 両者が高い場合がみられた. また, P/Am・Nは食味との間に有意の相関がみられた. 3)炊飯米の溶出アミノ酸はその総量と各アミノ酸の含有比率に品種の特徴が認められた. すなわち, 日本型の良食味品種では溶出アミノ酸総量が少なく, グルタミン酸, アスパラギン酸等の割合が高かった. 4)食味に及ぼす穀粒成分の影響を重回帰分析の標準偏回帰係数の符号でみると, リンはプラスの方向に, カリウムは逆方向に作用することが認められた. 同様にしてアミノ酸の影響をみると, アスパラギン酸とグルタミン酸はプラスに作用することが認められた. 5)以上の結果から, 炊飯米から溶出してくるアミノ酸総量中のグルタミン酸やアスパラギン酸の割合は食味に対してアミロースや窒素と同様に重要な働きをしているものと推測された.