日本作物学会紀事
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暖地における早期栽培水稲品種キヌヒカリの収量および食味
楠谷 彰人浅沼 興一郎木暮 秩関 学平田 壮太郎柳原 哲司
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1992 年 61 巻 4 号 p. 603-609

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抄録
暖地(香川県)における移植期と施肥法との組み合せがキヌヒカリの収量と食味に及ぼす影響を検討した. 移植期は早植区(3月28日移植)と普通植区(6月17日移植), 施肥法は標肥区(10aあたり窒素11.0kg)と多肥区(同17.3kg)および有機肥区(同17.3kgを有機質肥料を主体に供与)であった. 1. 早植区の気象上の特徴は穎花分化始期までの著しい低温, その後出穂期までの低温低日射および出穂期後の高温高日射にあった. 出穂期後収穫期までの日平均気温は, 早植区では平均26.9℃, 普通植区では平均24.6℃であった. 2. 穂数およびm2あたり総籾数は早植区の方が多く, 総籾数と収量(粗玄米重)との間には有意な正の相関関係が存在した. 総籾数と登熟歩合とは有意な負の相関関係にあったが, 同じ籾数での登熟歩合は早植区の方が高かった. 3. 玄米中のアミロース含有率は早植区の方が低かったが, 施肥法による差は認められなかった. アミログラムの最高粘度とブレークダウンは, 移植期別には早植区の方が高く, 施肥法別には多肥区で低かった. タンパク質含有率は多肥区, 標肥区, 有機肥区の順に高かったが, 移植期間に差は認められなかった. タンパク質含首率と登熟歩合との間には有意な負の相関関係が存在した. 4. 官能検査による食味の総合評価値はタンパク質含有率とのみ有意な負の相関を示し, 本試験の場合, 食味は移植期よりも施肥法に強く影響された. 5. 以上から, 多肥栽培を避けることにより早期移植で多収と理化学的食味特性の向上が同時に実現される可能性が示された.
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