日本作物学会紀事
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異なる土壌におけるコムギの生育と収量 : 第3報 節位別分げつの出現, 有効化, 収量に対する寄与度におよぼす窒素とリン酸の増肥効果
佐藤 暁子末永 一博川口 數美
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1992 年 61 巻 4 号 p. 610-615

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抄録
試験は赤色土, 厚層多腐植黒ボク土, 淡色黒ボク土において, アサカゼコムギ, 農林61号, 農林64号を供試して行った. 赤色土では3品種とも3回の窒素追肥により, 多くの分げつの有効化率と子実重が増加した. 農林61号と農林64号では, 窒素追肥により生育中期以降に出現する分げつが著しく増加した. これらの分げつは, 有効化率が低く, 出現の増加は過繁茂につながったと考えられ, 倒伏を助長した. アサカゼコムギは, 窒素追肥しても生育中期以降の分げつの出現が増加せず倒伏しなかったので, 平均1穂粒重の増加が大きかった. 一方, 黒ボク土ではリン酸50 kg/10 aの増肥により, 多くの分げつの出現率が増加し, Tc(鞘葉の葉腋から出現した分げつ), T1, T2, T3 (主稈の第1~3葉の葉腋から出現した分げつ)の子実重が増加した. 農林64号はリン酸の不足する黒ボク土においてはT1の出現率と有効化率が高いという有利性を示したが, リン酸増肥によりアサカゼコムギと農林61号でもT1が出現し収量に寄与することになったことで収量の品種間差異が小さくなった.
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