抄録
水ストレスに対するイネの反応の品種間差異を評価するために, 培地水ポテンシャルと空気湿度を組み合わせた条件で, 個体当りの吸水蒸散量を重量法で調査した. 培地水ポテンシャルはポリエチレングリコール6000を用いて設定した. 水ストレス下での吸水蒸散量の品種間差異は, 空気湿度45%以下で顕著で, 低空気湿度下で培地水ポテンシャルを変えての吸水蒸散量の測定は, 品種の水利用特性を評価する有効な方法と考えられた. 吸水蒸散と葉身の含水率に基づいで, 13品種は3つのグループに分類され, 従来耐乾燥程度が大きいとされた品種では小さい品種に比較して, 低湿度低水ポテンシャル下での吸水蒸散量の低下が小さく, 含水率が高く維持されていた. また, 耐乾燥程度大の品種では, 水ストレス処理によるデンブン含量の低下と糖含量の増大が認められ, 水ストレス下でデンプンを糖に変える特性は浸透調節を通じて耐乾燥性の付与に係わる形質の一つと推定された.