日本作物学会紀事
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水稲の下位節間長に及ぼす窒素と稈基部光環境の影響
上地 由朗林 茂一堀江 武
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1993 年 62 巻 2 号 p. 164-171

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抄録
後期重点追肥型とV字型の, 典型的に異なる二つの施肥法のもとで施肥量を変えて, 圃場およびポット栽培した水稲について, 下位節間長の変異を同伸関係にある葉身長, 葉面積および稈基部光環境と関連づけて解析した. まず, 従来から同時伸長性があるとされている上位葉身長と下位節間長の関係を調べたところ, 両者の間には正の相関関係が認められず, 無相関あるいは負の相関関係が存在するものもあった. また, 窒素施肥総量が同じ場合, 後期重点追肥型試験区における下位節間長はV字型試験区におけるそれよりも短かくなった. 後期重点追肥型試験区における窒素追肥は下位節間伸長期間に行われており, したがって, 下位節間伸長は窒素追肥の直接的影響を受けないと推察された. 下位3節間長の和は穂首分化期の葉面積指数との間に正の相関関係が, そして下位節間伸長期間における稈基部の積算日射量との間に負の相関関係が認められた. さらに, ポット試験において稈基部を遮光することにより, 明らかに下位節間は伸長した. 以上のことから, 水稲における下位節間長変異の要因として, 下位節間伸長期における群落の光環境が重要であり, 多窒素は茎葉を繁茂させることにより, この光環境の悪化をまねくと考えられた.
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