抄録
一葉挿し接木植物における光合成と根重生産をシンク・ソース関係の視点から解析, 論議した. コガネセンガン (K), シロユタカ (S), 紅赤 (B) および蔓無源氏 (T) の4品種を接穂と台木として正逆に組合せ, 16組の接木植物を作り供試材料とした. 根重 (RX/Y) に及ぼすシンクとソースの個別および組合わせ効果を解析にするため, 数学モデルを創出し, 接穂効果 (EX/*) と台木効果 (E*/Y) および両者の組合せで生じる一般組合せ効果 (GCEX/Y) と特定組合せ効果 (SCEX/Y) を算出した. 下式にこれらの関係を示す. RX/*=EX/*+R*/*:R*/Y=E*/Y+R*/*:GCEX/Y=(EX/*+E*/Y)/2:RX/Y=GCEX/Y+SCEX/Y+R*/*:ここで, RX/Yは品種 (X) を接穂, 品種 (Y) を台木とした植物の根重である. RX/*とR*/Yは, それぞれ品種 (X) を接穂あるいは品種 (Y) を台木にした植物の平均根重である. また, R*/*は16組合せ全植物の平均根重である. KまたはBを接穂に用いると根重が増加し, 正の接穂効果が得られた. Kの台木効果も正の値であった. Tにおける両効果はともに小さく, 負の値であった. 一般組合せ効果と特定組合せ効果は正の相関関係にあったが, 例外 (T/SとT/T) も認められた. 光合成速度は, Kを台木あるいは接穂に用いると高くなった. T/SとT/Tの光合成速度は特に低い値であった. 光合成速度と根重とは限られた範囲内では正の相関関係にあった. Tを台木にした組合せやT/Sでは葉柄重が増加した. 根のシンク能が制限される場合では葉柄がシンクとして機能した.