日本作物学会紀事
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水稲の穎花ならびに枝梗分化に及ぼす生殖生長期の体内窒素の影響
小林 和広堀江 武
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1994 年 63 巻 2 号 p. 193-199

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抄録

暖地における収量停滞の原因の一つは穎花数の不足であり, 窒素当たりの穎花生産効率の低いことがその主たる原因といわれている. 穎花生産効率を低からしめる機構を解明するために, 2カ年の圃場実験を行った. 水稲日本晴を用い, 窒素施肥の時期と水準を種々に変えることによって, 生殖生長期の稲体の窒素栄養状態に変化を与え, 地上部窒素含有率および含有量との分化穎花数ならびに分化1次, 2次枝梗数との関係を調べた. 種々の窒素処理の結果, 面積当たりの分化穎花は17800から56600/m2の広い範囲にわたって得られた. この分化穎花数と稲体の窒素動態との関係の解析により, 単位面積当たりの分化穎花数は穎花分化始期の地上部窒素保有量によって支配されるのみならず, 穂首分化期から穎花分化始期までの地上部窒素含有率の変化からも大きな影響を受けることが分かった. また, この時期の窒素含有率の上昇による穎花分化の促進は分化1次枝梗当たりの分化2次枝梗数の増加によった. 以上から, 暖地の水稲では, 穂首分化期以降の乾物生産の顕著な増加に窒素吸収が追いつかないために, 地上部窒素含有率の急激な低下がもたらされ, 穎花生産効率の低下と穎花の不足が生ずることが示唆された.

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