高NaCl濃度下において認められるイネの根のNa
+排除機能のメカニズムを, 逆浸透を想定して検討するとともに, 耐塩性品種Kala-Ratal-24 (KR1)と感受性品種IR28の差異を検討した. この想定からは, 蒸散による負圧を駆動力としていることが推測されるため, 溶液を根に加圧する装置を用い, 一本の切断根を対象にNaCl溶液を加圧して得られる出液のNa
+濃度を測定した. その結果, 切断面全体からの出液のNa
+濃度は培地のNa
+濃度に比べ最大でも60%の低下であったのに対し, 中心柱部分のみから得られた出液のNa
+濃度は約85%の低下を示した. これらの結果から, 溶液が外皮および内皮を通過する際にNa
+の排除が行われていることが窺われた. また, 溶液の物理的加圧によって排除機能が働いたことは, この機能が非代謝的な過程であることを示すとともに, 圧力を駆動力とした機能であり, 逆浸透に酷似した機能であることが示唆された. X線マイクロアナリシスの結果から, 感受性品種であるIR28の根で, KR1に比して, 内皮を横切るNa
+の移動が, より起り難いことが明確になった. しかしながら, KR1では, 個体当たりの根数が多く, 長く太い根が多いこと, 横断面積に対する中心柱面積の割合が高く, 横断面積当たりの後生大導管数も多いことが認められ, これらの形態的特徴が高NaCl濃度条件下における蒸散速度の維持に貢献しているものと考えられた. そして, この特性の違いが, Na
+排除の駆動力の確保の差異を通じて, 両品種の耐塩性程度の違いをもたらす理由の一つと考えられた.
抄録全体を表示