抄録
一試験区でイネを1株1本植えにした場合, 各主稈の生育型一葉身長・葉鞘長・節間長の葉位別変化の型で規定-は, 通常二つに分れることを先に報告した. この生育型は明瞭に異なり, しかも主稈総葉数の1葉差に対応しているので, 総葉数が多い方のそれをN型とし, 他を[N-1]型とした. 本報では,この主稈の生育型に対する各分げつの生育型の構造的な対応関係を明確にし, 主稈から各分げつに及ぶ葉群形成の機構を考究するとともに, いわゆる「相似生長理論」の当否を検討した. その結果, 一般に分げつとその母茎の各生育型に次の対応関係が認められた. (1)前出葉を含む分げつの総葉数が, その分げつの出現節位より上の母茎(相関母茎と略称)の葉数に等しい場合, 分げつの生育型は相関母茎の生育型と同型になり, いわば分げつは相関母茎の模写体になる. この時の生育型には通常二つの類型があり, 相関母茎と分げつがともに[N-1]型, あるいはともに[N-2]型のいずれかになる. このうち前者の出現頻度が高いことから, これが母茎・分げつ間の基本関係であると判断した. (2)分げつの総葉数が相関母茎の葉数よリ1葉少ない場合, 一般に相関母茎の生育型は[N-1]型であり, 分げつの生育型は[N-2]型になる. ただし(2)の場合に関連して, (3)N型主稈の下位1次分げつの生育型は, 一般に[N-1]型になる. この(2)と(3)は, 前述の(1)を基本関係とする模写体形成の変型と考えられた.また, これらの対応関係は相似生長理論に対して規則的なずれをもっていたので, 新たに「模写生長」の見方を提起した.