日本作物学会紀事
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野生サトウキビ(Saccharum spontaneum L.)を含む数種サトウキビ属における葉身のガス交換特性の変異
野瀬 昭博上原 勝川満 芳信小波本 直忠仲間 操
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1994 年 63 巻 3 号 p. 489-495

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抄録
北西太平洋地域の熱帯から温帯にかけて採集された野生サトウキビSaccharum spontaneumの10系統, 種間交雑種(Saccharum hybrid) NCo 310, 南西諸島の在来種S. sinense cv. Yomitanzanを用いて, 個葉のガス交換速度の光強度と温度に対する反応を調査した. ガス交換速度に関与する要因として, 気孔伝導度(Gs), 全窒素含量(N), 可溶性タンパク質含量(SLP), ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC), NADP-リンゴ酸酵素(ME), フラクション1タンパク質含量(F1P), クロロフィル含量(CHL), 比葉面積(SLA)を測定し, ガス交換速度との関連を検討した. 強光下(1700μmol/m2/s)でのCO2交換速度(CER1700), 弱光下(180μmol/m2/s)での気孔伝導度(Gs180), N, SLP, PEPC, ME, F1P, CHL, SLAにおいて, 系統・種の間に有意な変異(P<0.05)が認められた. Tainanは, 20℃から35℃にわたって供試したSaccharum属のなかで最も高いCO2交換速度を示した. つまり, S. spontaneum系統Tainanはサトウキビの多収性育種素材として優れた特性を有していることが明らかになった. 供試したSaccharum属における強光下でのCER1700は, 気孔(Gs;=r 0.496, P<0.01)及びマンガン型ME(MEMN, r=0.838, P<0.01), マグネシュウム型, ME(MEMG, r=0.547, P<0.01), クロロフィル含量(CHL, r=0.466, P<0.01)と高い相関を示した.
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