日本作物学会紀事
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深水処理が水稲分げつの出現に及ぼす影響
大江 真道後藤 雄佐星川 清親
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1994 年 63 巻 4 号 p. 576-581

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抄録

水稲の分げつの出現に及ぼす深水の影響を調べるために, 深水処理期間中の水深を一定に保つ実験(第1実験)と, 主茎の葉の展開完了ごとに水深を段階的に深くして行く実験(第2実験)を行った. 第1実験では, 主茎のすべての完全展開葉の葉鞘が水面下に沈むように主茎葉齢約5.0から葉鞘の高さを水位の基準にして処理した結果, 水没した主茎の葉鞘内で生長中の分げつのうちで特に3号分げつ(T3)の出現が抑制された. しかし, T3と同様に水没した主茎の葉鞘内で生長中のT4, T5の出現は抑制されなかった. このことから, 深水による分げつの出現抑制は, 必ずしも分げつ芽を包む主茎の葉鞘の水没によって決定づけられるものでないと推定した. 第2実験では主茎のすべての完全展開葉の葉鞘が常に水面下に沈むように, 葉が一枚展開するごとに順次水深を深くする処理を主茎葉齢約5.2から10.5まで行った. その結果, T4, T5, T6の出現が抑制された. 水深を深くした時期と分げつの生長反応との関係から, 分げつ芽の深水に対する影響は生育段階によって異なり, 最も影響を受けやすい生育段階は, 分げつ芽自身が葉原基を約4枚分化して葉鞘から出現直前の時期で, その前の, 葉原基を2~3枚分化した早い時期, 及び出現を開始した生育の進んだ時期は影響が小さいことがわかった.

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