1994 年 63 巻 4 号 p. 625-631
アフリカイネ(Oryza glaberrima Steud.)はイネ(O. sativa L.)よりも不良環境対する耐性が強いと言われている. 本報告では, 葉の水ポテンシャル低下に対する個葉光合成速度と気孔開度の反応を, Oryza glaberrima Steud. の2系統とO. sativa L.の2品種とで比較し, O. glaberrima Steud. の有する耐干性機構に関する情報を得ようとした. O. glaberrima Steud. は, O. sativa L.に比べて, より低い葉の水ポテンシヤル条件下でも気孔を開き, 光合成を維持していた. これは, 乾燥条件下での水分維持という観点からは不利であるが, 乾燥条件下でも光合成, ひいては乾物生産を行えるという点では有利な特徴といえる. 次に, 葉の水ポテンシャル低下にともなう葉中のアブシジン酸(ABA)含量の変化を調べた. その結果, ABA含量は, 両種において, 葉の水ポテンシャルの低下とともに増加していたが, ABA含量の増加に対する気孔伝導度の減少程度は, O. sativa L.のほうがO. glaberrima Steud. よりもはるかに大きいことが判った. このことが, O. glaberrima Steud.では, より低い葉の水ポテンシャル条件下でも気孔開度が大きく維持されている原因の一つと考えられた. なお, 葉の水ポテンシャルの低下にともなう炭酸固定酵素, リブロース-1, 5-ビスホスフェートカルボキシラーゼ含量の変化を調べたが, この点については, 両種の間に明瞭な差は認められなかった.