日本作物学会紀事
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ダイズ複葉の運動と環境条件との関係 : 第4報 個葉の葉面受光
斎藤 邦行稲村 隆治石原 邦
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1994 年 63 巻 4 号 p. 616-624

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抄録

ダイズ複葉の光に対する反応を明らかにするため, 実験室内において複葉に人工光を照射し, (1)3小葉先端を結ぶ三角形ΔTの面積および小葉の傾斜角度の変化, (2)葉面受光量の変化, (3)光強度と複葉の運動との関係を検討した. 光照射後, 3小葉の傾斜角度は大きくなり, 60分後のΔTは57%まで減少した. 頂小葉の傾斜角度が大きくなるに従って葉面受光量は減少し, 60分後には水平面に比べ30~50%低くなった. 水平面光強度が大きくなり300μE・m-2・s-1になるとΔTは急速に小さくなり, さらに600μE・m-2・s-1になると葉面受光量は水平面に比べ50%以上低くなった. 野外において, ポットに生育したダイズ頂小葉に光センサーを貼り付けて, 水平面光強度を100とした相対葉面受光量(RL)の日変化を調査した. RLは早朝には100%以上を示したが, 日中は傾斜角度が大きくなるに従い50%以上低下した. 圃場栽培したダイズ個体群上層の小葉においても, RLは日中約60%まで低下した. 個体群上層における葉の木部水ポテンシャル(Ψx)の日変化を調査した結果, 前日に葉枕をアルミホイルで固定した区のΨxは対照区に比べて0.05~0.1 MPa低くなった. 以上の結果から, ダイズ複葉は光合成が光飽和に達しない程度の弱い光に反応して傾斜角度が大きくなりΔTは小さくなること, これに伴って葉面受光量は減少するものの, 日射の強い日中には個葉光合成速度は減少させていないこと, また葉面受光量を減少させることによりΨxを高く維持し, 水分ストレスを回避していることが推察された.

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