1995 年 64 巻 2 号 p. 209-215
中国産の超多収性F1品種, 汕優63号 (SH)の個葉光合成速度 (Pl)を評価するため, わが国の代表的自殖系2品種 (JC;日本晴とコシヒカリ)と比較した. 各品種を生育初期から出穂直前期まで, ポット栽培した. Plと関係の深い要因として, 気孔伝導度, 葉肉伝導度, クロロフィル含量, 可溶性タンパク質含量, リブロース1,5ニリン酸カルボキシラーゼ(RuBPCase)活性等を測定した. 結果を以下に述べる. 1) SHのPlは, JCに比較し, 生育期間中, 常に高く維持された. 特に, 生育初期では, SH (26.98μmolm-2s-1)とJC (平均;21.15μmolm-2s-1)との差が大きかった. 2) 生育初期にSHのPlが高いのは, 気孔伝導度と葉肉伝導度の双方が高いことによるものであった. また, 出穂直前期には, 葉肉伝導度が高いことがSHのPlを高める主要因となっていた. 3) 可溶性タンパク質含量とクロロフィル含量はSHで有意に低かった. 一方, RuBPCase活性にはSHとJCとの間で有意差は認められなかった. 4) このように, SHの葉内のクロロフィル含量や可溶性タンパク含量は少ないが, Plは高く, また, RuBPCase活性もJCと同じ水準の活性を示すことが明らかとなった. 個葉光合成に関して, 高い窒素利用効率を示すことがSHの特性の一つであると考えられた.