日本作物学会紀事
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ゴルフ場排水中の肥料成分の流出特性と環境への負荷量
冨森 聡子長屋 祐一田代 豊谷山 鉄郎
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1995 年 64 巻 4 号 p. 682-691

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抄録

ゴルフ場で使用される肥料について1993年6月から1994年5月末までの1年間, 4日間隔8日間隔で採水し, 肥料成分の流出特性を把握し, その負荷量を算出した. 結果は次の通りであった. 全窒素は施肥後2~3日で無施肥時に比し高濃度に検出され始め, 施肥量の多い5月に最高濃度を示した. 全リンも同様, 施肥後1~2日で無施肥時に比し検出濃度の上昇がみられ, 春期に高濃度を記録した. 7種類の肥料が使用され, 散布量は年間, 約28トンであった. グリーンに最も多量の肥料が散布された. ゴルフ場の流出負荷量は森林の負荷量に比し, 全窒素は4倍, 全リン43倍と, 特に全リンの負荷量が多かった. ゴルフ場の芝草管理と水稲栽培における施肥量を比較すると前者は窒素11.2kg/10a, リン14.2kg/10a, カリウム10.0kg/10aで, 後者は窒素8~15kg/10a, リン10~20kg/10a, カリウム10~20kg/10aであるので, 肥料の使用量については類似していた. 以上のことから, 全国のゴルフ場は砂主体で, しかも排水第一に造成されており, かつ芝草管理も類似していることから, ごく一般的な中堅クラスのゴルフ場においても, 排水は農業用水や河川, 飲料水源, 地下水等, 周辺環境の水系に負荷をおよぼしていることが示唆された.

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