抄録
越冬前のコムギ茎基部に含有されるフルクタンの分子量分布について, 品種育成の系譜上の29品種を用いて調査した. その結果, 多くの品種で低分子のフルクタンを多く蓄積する傾向がみられ, その蓄積量の品種間差が顕著であった. 分子量分布の品種間差を明確にするために, 高分子と低分子のフルクタン, さらに単少糖類に分けてクラスター分析を行なった. その結果, フルクタンの多い品種群と少ない品種群, さらにこれらのクラスターから独立したVelvetと本育49号の4つのクラスターに分類できた. Velvetと本育49号は高分子のフルクタンが多い特異的な分子量分布を示し, 今後フルクタン含有率を高めるうえで有用な遺伝資源と考えられた.