日本作物学会紀事
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乳苗の出芽器内緑化育苗法と機械移植適応性
斎藤 満保後藤 雄佐松森 一浩山本 由徳
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1995 年 64 巻 4 号 p. 734-739

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抄録
乳苗の育苗を出芽器内だけで完結させる育苗法に, 緑化過程を取り入れる方法を開発し, その緑化苗の特質と, 水田に機械移植した時の植え付け姿勢を調べた. 水稲ササニシキを2種類の培地(I, II区)を用い, 31℃の出芽器で4日間育苗した. 育苗は, 積み重ね方式で出芽させ, 播種後約30時間で棚(間隔14cm)に積みなおした. 棚積み後に, 光を通さない保温カバーのままの暗区と, 透明エアーキャップシートで作った保温カバーに替えて補光した光区とを設けた. 光区の保温カバーは, 真横から補光すると光が散乱し, 出芽器内全体が明るくなった. 光区では第1葉と第2葉葉鞘(LS2)は淡緑色, 第2葉葉身(LB2)が濃緑色の「緑化苗」を得ることができた. 光区の苗の草丈は, LS2長の影響を受け暗区の苗と同じかやや短くなった. しかし, LB2は同じか長く, 光による伸長抑制は認められなかった. 光区の苗は硬く弾力があるのに対し, 暗区ではやや折れやすい感触であった. また, 培地が異なることで, 草丈など苗形質に差が現れた. II区の草丈は, 機械移植に必要とされる6cm以上を確保できたが, I区では5cmほどであった. このように全面的に胚乳養分に依存していると考えられる初期の4日間の育苗でも, 肥料だけでなく培地の素材も影響を与えることが推察され, 乳苗育苗において移植に必要なマット強度以外でも培地素材の重要性を指摘した. 水田での植え付け姿勢は, 草丈が短いにもかかわらず光区の方が暗区より良かった. これは, 緑化により苗の弾力性等の物理的形質が向上するためと考えた.
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