抄録
イネの倒伏後の草姿の回復機構を調べるため, それに関与するとみられる葉枕やラミナジョイント(LJ)の屈曲, 葉鞘のねじれについて調査を行った/ 実験材料は水稲品種ササニシキである. 第1実験では, イネをポットごと横転処理し, LJと葉枕の屈曲反応を経時的に調査した. 横転によってLJおよび葉枕の屈曲角度が増加した. 横転から直立ヘ戻した処理区において, 葉枕の屈曲角度は減少したが, LJの屈曲角度は元に戻らなかった. 第2実験では, 横転処理した個体の葉鞘部のねじれについて, その発生部位とその後の経過を調査した. その結果, 葉鞘は中央付近から上部では下向きに, 基部側は上向きにねじれることが示された. 第3実験では, 葉鞘のねじれを起こす物理的要因を調査した. まず, 葉身の剪葉あるいは葉身への加重処理をした結果, 加重処理でねじれの程度が大きく, 葉身重がねじれの程度に影響を与えることが示された. 次に, 直立状態のイネの葉身に横向きに力を加えた場合は, 力を除くとねじれの角度は減少した. 第4実験では, 温度処理がねじれに与える影響を調査した. その結果, 低温区では葉鞘のねじれの程度が小さく, 葉鞘のねじれは温度の影響を受ける生理的反応であることが示唆された. なお, 葉鞘基部(葉枕)-中央部-先端部(LJ)は, イネ地上部の重力に対する1つの反応単位として捉えることが妥当であるとの結論を得た.