抄録
深水処理が日本型水稲品種の稈の生長と倒伏抵抗性に及ぼす影響を検討するために穂数型の日本晴, ササニシキと穂重型の黄金錦, 月の光の計4品種を供試して検討した. 深水処理は主茎の第7葉の葉鞘が完全に水没する水位(水深約25cm)で主茎の第8葉抽出期に開始し, 登熟期まで行った. 深水区において供試4品種すべての基部伸長節間の直径が著しく増し, 挫折重も高まる傾向が認められた. しかし, 稈の直径が浅水区と同程度の場合, その挫折重は大きく劣り, 稈の太さの挫折強度への寄与は浅水区に比べて劣った. 深水区の伸長節間の基本柔組織内では破生通気組織の著しい発達が認められ, その直径は浅水区に比べて約3.5倍となり, 節間の横断面に占める割合は浅水区の1.5%に対して13.7%と浅水区を著しく上回った. このような破生通気組織の著しい発達は深水条件に適応したものであり, 組織間の酸素の移行に重要な役割をはたしていると考えるが, 一方で伸長節間における基本柔組織の充実を低下させ, 挫折強度を低くする要因の一つとなっていると推察される.