抄録
今後の地域別の良食味米生産技術の改善のための基礎的知見とするために, 比較的狭い地域内で標高と土壌型が異なる産地間における米の食味と理化学的特性の実態を明らかにし, その要因を検討した. 米の食味には産地間差があり, 土壌型の違いによる影響が大きく認められ, 標高の差による影響は明らかでなかった. 淡色黒ボク土からなる産地の食味は細粒黄色土, 細粒褐色低地土および礫質灰色低地土からなる産地に比べて劣った. また, 淡色黒ボク土からなる産地の米のタンパク質含有率は細粒黄色土, 細粒褐色低地土および礫質灰色低地土からなる産地の米に比べて高かった. 産地をこみにした食味と理化学的特性との関係は, 食味とタンパク質含有率との間に有意な負の相関関係が認められた. 一方, 食味とアミロース含有率, アミログラム特性との間には有意な相関関係は認められなかった. これらのことから, 土壌型の違いによる食味低下, なかでも淡色黒ボク土産米で食味が劣った主因は, タンパク質含有率の増加によるもので, 食味低下とアミロース含有率とアミログラム特性との関係は小さいと考えられた. 淡色黒ボク土産米のタンパク質含有率が高かったのは, 黒ボク土で特有にみられる土壌窒素無機化量が生育後期に増加してくるためと推察された. 今後, 産米の食味改善の観点から土壌型が淡色黒ボク土からなる産地においては, 施肥技術および土壌の改良等による窒素過剰吸収の制御が欠かせないものと考える.