抄録
土壌水分欠乏条件下での光合成は膨圧(ΨP)と相対含水率(ξ)を保つことによって維持される傾向がある. そこで, 本報告では前報で水ストレス耐性と回避性を検討した品種について, ΨPとξの維持能力の品種間差を検討した. 土壌水分欠乏条件下でΨPとξの維持能力を調べた結果, 品種間差が幼植物期, 穂ばらみ期, 稔実期のいずれの生育時期においても認められた. ΨPとξの維持能力は低土壌水ポテンシャル下の光合成維持能力との間に正の相関が認められ, こうしたΨPとξの維持能力は一生にわたり安定な形質であって, 乾燥抵抗性品種の育種上重要な指標となりうると考えられる. さらに, 同じΨP或いはξを維持することができる品種の中にも, 光合成がこうした低いΨPとξに対しより高い耐性を示す品種があることがわかった. 低土壌水ポテンシャル下で膨圧および相対含水率の維持は光合成能力の維持に重要な役割を演じると思われた.