前報の材料を用い, 日本型多収性水稲もち9004系統(L9)の精玄米千粒重の成立要因を穂の部位別の1次および2次枝梗籾(以下, 穂の部位別籾)に着目して, 対照品種とした日本稲うるち品種コガネマサリ(KM)と比較検討した. 1) 穂の部位別籾の精玄米千粒重は, 一般にKMでは上部>中部>下部, L9では下部>中部>上部であった. また1次と2次枝梗籾の精玄米千粒重の差はKMに比べてL9で小さかった. L9の1次および2次枝梗籾の精玄米千粒重はいずれの穂の部位でもKMより重く, その差は穂の下部>中部>上部の順に, また1次枝梗籾に比べて2次枝梗籾で大きかった. しかし, L9とKMの籾殻重の差は小さかった. 2) 穂の部位別籾の精玄米容積はL9>KM, 精玄米比重はKM>L9であった. また, 精玄米千粒重は容積と品種別, あるいは両品種を込みにしても, いずれも1%~0.1%水準で有意な正の相関関係を示した. 3) L9の穂の部位別籾の登熟日数はKMと同じかそれよりも短く, 逆に乾物蓄積速度はKMより速かった. この籾乾物蓄積速度の差異は登熟期前半(穂揃期後16日まで)に認められ, これにはL9の穂の含水率がKMより高く推移したことが関係していると推定された. 4) 以上より, L9の穂の部位別の1次および2次枝梗籾の精玄米千粒重がいずれもKMに比べて優ったのは, L9の穂の含水率が高く推移し, 籾の炭水化物受け入れ能力がKMより高く維持された結果, 登熟期前半の乾物蓄積速度が速くなったことによると考えられた.