抄録
極早生~早生水稲で良食味である福岡県の育成品種と対照品種を供試品種として, 出穂期と稈長について品種と環境条件の交互作用を推定した. 出穂期では, 年次と品種, 場所と品種, 施肥量と品種, 作期と品種の交互作用があった. 交互作用が検出されたのは実験誤差の小さいことにもよっており, 施肥量や作期での交互作用の場合, 品種間差の変動は小さく, 特に施肥量の違いでは1日以内の変動であった. 稈長では, 年次と品種, 場所と品種の交互作用があったが, 施肥量と品種, 作期と品種の交互作用はなかった. また, 出穂期や稈長について育成品種と対照品種は同程度の安定性を持っていた. 従ってこれら品種で出穂期や稈長の品種間差を評価するとき, 年次, 場所を変えた試験は必要であるが, 出穂期では施肥量, 稈長では施肥量, 作期を変えた試験の必要性は少ない. またこれら品種を県内に普及するとき, 出穂期では施肥量, 稈長では施肥量, 作期が違っても既存品種との差はあまり変動しないとして栽培技術指針を作成してよい.