日本作物学会紀事
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66 巻, 4 号
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  • 石丸 健, 齋藤 和幸, 窪田 文武, 森 和一
    1997 年 66 巻 4 号 p. 531-537
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    アイスプラントは塩ストレス等により光合成型をC3型からCAM型に転換する. 培地に6-ベンジルアミノプリン(BAP)を添加することによりC3型およびCAM型の植物体の葉組織から効果的に緑化カルスを誘導することができた. 誘導した緑化カルスの光合成は, C3型由来のものでは低温適応型, CAM型由来のものでは広範囲の温度に適応した光合成の温度反応を示した. また, C3型に由来する緑化カルスのリブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ(RuBPCase)活性は, ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPCase)活性に比べて高く, CAM型由来のものでは, RuBPCase活性に比べてPEPCase 活性が高い値を示した. この様に緑化カルスには元の植物体の酵素活性特性を維持する傾向が認められた. さらに, C3型由来の緑化カルスに塩処理を課すとPEPCase活性が増加し, 元の植物体で測定した活性値とほぼ同水準に達した. しかし, 緑化処理していないカルスでは, 塩処理によるPEPCase活性の増加が認められなかった.
  • 今林 惣一郎, 松江 勇次, 浜地 勇次, 吉田 智彦
    1997 年 66 巻 4 号 p. 538-544
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    極早生~早生水稲で良食味である福岡県の育成品種と対照品種を供試品種として, 収量について品種と環境条件の交互作用を推定した. 年次と品種, 場所と品種に交互作用があり, 収量の品種間差が年次や場所の違いで変動した. 施肥量と品種, 作期と品種の交互作用は認められなかった. 品種の適応性を回帰分析によって評価したところ, 福岡県の育成品種は対照品種のコシヒカリやキヌヒカリと同程度の適応性や安定性を持っていた. 収量と食味との間には有意な品種間相関は認められず, さらに福岡県の育成品種と対照品種との収量は同程度であった. これらの結果から, 北部九州において極早生~早生の良食味品種の収量を評価するときには年次や場所を変えた試験に重点を置いて行うべきであること, 福岡県の育成品種の適応性や収量が既存の良食味である対照品種よりも劣ることはないことが明らかになった.
  • 今林 惣一郎, 松江 勇次, 浜地 勇次, 吉田 智彦
    1997 年 66 巻 4 号 p. 545-550
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    極早生~早生水稲で良食味である福岡県の育成品種と対照品種を供試品種として, 出穂期と稈長について品種と環境条件の交互作用を推定した. 出穂期では, 年次と品種, 場所と品種, 施肥量と品種, 作期と品種の交互作用があった. 交互作用が検出されたのは実験誤差の小さいことにもよっており, 施肥量や作期での交互作用の場合, 品種間差の変動は小さく, 特に施肥量の違いでは1日以内の変動であった. 稈長では, 年次と品種, 場所と品種の交互作用があったが, 施肥量と品種, 作期と品種の交互作用はなかった. また, 出穂期や稈長について育成品種と対照品種は同程度の安定性を持っていた. 従ってこれら品種で出穂期や稈長の品種間差を評価するとき, 年次, 場所を変えた試験は必要であるが, 出穂期では施肥量, 稈長では施肥量, 作期を変えた試験の必要性は少ない. またこれら品種を県内に普及するとき, 出穂期では施肥量, 稈長では施肥量, 作期が違っても既存品種との差はあまり変動しないとして栽培技術指針を作成してよい.
  • 平野 貢, 山崎 和也, TRUONG Tac Hop, 黒田 栄喜, 村田 孝雄
    1997 年 66 巻 4 号 p. 551-558
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲品種あきたこまちとひとめぼれを供試して, 基肥窒素無施用一8葉期以降追肥の施肥体系と疎植の組合わせ栽培が慣行栽培に比べて低収である原因と改善の可能性について検討した. 基肥窒素無施用-疎植栽培区では葉面積や分げつなどの栄養生長が緩慢で最大葉面積指数も4程度と小さかった. また有効茎歩合が慣行区に比べてやや大きかったにもかかわらず, 登熟期におけるm2当たり穂数はかなり小さく, m2当たり籾数は3万粒を下回った. 登熟歩合は慣行区よりも明らかに大きかったが, 収量は慣行区より5-10%低かった. 穂揃期の有効茎数を株あたりで見ると, 1次分げつは慣行区と基肥窒素無施用-疎植栽培区で大差がなかったが, 2次分げつでは後者で多く, 全有効茎数も多くなった. 有効茎となった1次分げつおよび2次分げつの発生部位は慣行区では下位節に, 基肥窒素無施用-疎植栽培区では上位節に偏る傾向があった. しかし, 基肥窒素無施用-疎植栽培区の2次分げつ穂は1穂重, 穂長および1穂当たり生葉重が大きかった. 穂ばらみ期および登熟期の個体群内部の相対光強度は基肥窒素無施用-疎植栽培区で明らかに大きかった.
  • 三本 弘乗, 田村 晶, 鈴木 浩之, 大江 真道, 大門 弘幸, 山口 俊彦
    1997 年 66 巻 4 号 p. 559-570
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の根系形態を, 簡易的に調査して評価する方法を考案し, アメリカの品種と日本の品種の根系を, 圃場, 大型根箱(20,736cm3), 小型根箱(116cm3), 水耕の栽培条件で比較検討した.各実験とも, プラスチック板を用いて, 冠根を垂直な平板状に展開させるようにして育て, 写真撮影して根系の画像を得た. 画像は株の中心基部からの距離(5cmごと)と, 水平面からの角度(22.5°ごと)で等分した. 分割した各部位について, 株からの距離と角度との積の値を求め, これを各部位の「位置の値」(PV) とした. さらに, コンピュータで画像解析して各部位の「根面積」(RPA)を求めた. この「根面積」と「位置の値」から, 深根性程度を表す「根系の重心」[CRSG:(PV×RPA)の総和/RPAの総和]と, 耐ころび型倒伏性程度と関連性が高いと推測される「根系のモーメント」[MRS:(PV×RPA)の総和]を求めた. 圃場実験では, 分げつ盛期における調査によって, New bonnet を除くアメリカの品種は, 日本の品種に比べて, 「根系の重心」と「根系のモーメント」の値が大きいことを, 容易に明らかにすることができた(CRSG:Lemont>New bonnet≧M-401>M-7≧イシカリ>日本晴>月の光≧中生新千本, MRS:M-401>M-7>Lemont≧日本晴>中生新千本≧月の光≧New bonnet≧イシカリ). 大型根箱実験では, 圃場実験と同様の品種の「根系の重心」と「根系モーメント」の値を把握できた. しかし, 経費と管理の面から多数の品種は扱えなかった. 小型根箱実験と水耕実験では, それらの値を正しく把握することは困難であった.
  • 佐川 了
    1997 年 66 巻 4 号 p. 571-577
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズの中・下位葉の光合成速度と子実収量に及ぼす反射光の影響について, 品種「スズカリ」を用いて, 1994年はポット試験, 1995年は圃場試験で検討した. 反射光処理は, 花芽分化期以降に, 1994年はポットの上面をアルミホイルで覆うことにより, 1995年は栽培密度17.4本m-2<で栽培した圃場の畦間をリンゴの着色管理に使用される反射シートで覆うことによって行った. ポット試験の結果, 中・下位葉(第1本葉を第1葉として第4~6葉)の光合成速度は強光下(100μmol m<-2s-1以上)では葉位が高いほど大きかった. 光合成速度は各葉位とも開花期頃に最大値を示し, その後, 生育の進展に伴って減少した. 強光下における中・下位葉の光合成速度が反射光処理によって増大し, 中・下位葉の光合成特性が陽葉的に維持されたことが推測された. 中・下位葉の光合成速度が反射光処理によって増大したのは気孔におけるCO2拡散速度が増大したことに起因した. 圃場試験の結果, 反射光処理によって, 晴天日は畦間で, 曇天日は株間で葉群の中・下層で光合成有効放射強度が増大した. しかし, 圃場での反射光処理は収量を増加させるまでに至らなかった.
  • 小林 和広, 今木 正
    1997 年 66 巻 4 号 p. 578-587
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    近年育成された水稲の超多収品種は2次枝梗上の穎花(2次梗穎花)を増やし, 単位面積当たりの穎花数を増加させている. とくにタカナリは穂の上部に多くの2次枝梗を着生するので, 登熟能力も高いとされる. 穂の上部に2次枝梗の多く着生する品種を品質の優れた品種から育成する可能性を検討するために穂軸節位別にみた2次枝梗穎花の分化と退化の様相を超多収品種と日本型の穂重型品種とで比較した. 日本型の在来品種や大粒種を含む, 1穂穎花数の異なる8品種について, 各節位の1次枝梗上で退化した2次枝梗と, 2次枝梗上で退化した穎花数を調べ, 分化した枝梗数と穎花数を推定した. 穂軸節位別の2次枝梗分化穎花数の多少によって, 穂軸の下位節ほど多く分化する品種, 中位節に多く分化する品種, 中位および下位節に分化の多い品種の3つのタイプに穂型を分類できた. アケノホシ以外の1穂分化穎花数の多い品種では下位節に2次枝梗穎花が多く分化した. この増加した下位節の穎花は退化しやすかった. そのため, 南京11号と Arborio 以外では2次枝梗上の現存穎花は中位節でもっとも多くなった. 日本型の在来品種と改良品種にも穂型に特徴的な品種間差がみられなかった. 日本型の穂重型品種では1穂穎花数が超多収品種ほど多くないので, 下位節の2次枝梗穎花の退化を穂の上位の穎花が充分に補充できなかった. 以上の結果から今回供試した日本型の在来品種を利用して穂の上部の2次枝梗穎花数を拡大するのは難しいと判断した.
  • 王 余龍, 新田 洋司, 姚 友礼, 山本 由徳
    1997 年 66 巻 4 号 p. 588-595
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    群落水耕条件下でハイブリッドライス汕優63号を供試し, 生育前期 (葉齢14.5まで), 中期(葉齢13.5~17.0 (止葉完全展開), 後期 (葉齢17.0~成熟期) に窒素施用濃度の異なる処理区を設けて, 分化冠根原基数と出現冠根数, 株当たりの根重ならびに地上部の窒素, 全糖およびデンプン含有率を測定し, 水稲における窒素施用時期と施用濃度が根の生育に及ぼす影響と株当たりの地上部成分との関係について検討した. 生育前期には, 窒素施用濃度が高いほど株当たり根重は増加した. また, 株当たり根重は冠根1本当たり平均根重よりも根数に支配された. 一方, 生育中期には, 窒素施用濃度が高いほど株当たり根重は低下したが, とくに上位根 (最上位の3節に出現する根) 重の低下程度が大きかった. 生育後期の根の生育は生育中期の窒素施用濃度の影響を大きく受け, 根重に及ぼす施用窒素濃度の影響は小さかった. 生育期間をとおしてみると, 株当たり根重の増加量は生育中期で最も多く, ついで生育前期で, 生育後期はきわめて少なかった. 分化冠根原基数は冠根原基分化時の地上部の窒素含有率と高い有意な正の, 冠根出現率は冠根出現時のデンプン含有率と高い有意な正の相関関係を示し, 冠根原基の分化には窒素が, 冠根の出現にはデンプンが支配要因の1つと考えられた.
  • 王 先裕, 津田 誠, 谷山 鉄郎
    1997 年 66 巻 4 号 p. 596-602
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    酸性雨は, ダイズの地上部に接触することによって植物体と根粒に抑制的な影響を与えると考えられた. これを確かめるために, ダイズ品種奥原早生を1/5000 aポットに植え, ビニールハウス内で栽培し, 人工酸性雨を葉のみ, 土壌のみ, および通常の人工酸性雨処理として両方に散布した. 人工酸性雨のpHは, 2.7, 3.5, 4.5とし, 対照として水道水 (pH7.0) を散布する区を設け, 播種後15日目から36日目まで毎日散布した. 開花期 (播種後36日目) 調査の結果, 葉面積, みかけの光合成速度および根の乾物重は, 葉および両方の散布では人工酸性雨のpHが低いほど低下したが, 土壌のみの散布ではほとんど変わらなかった. 一方, 根粒の数, 生体重, 共生窒素固定速度 (アセチレン還元速度) は, 散布部分が異なってもpHの低下に伴い同程度低下した. アセチレン還元速度は, 光合成速度よりも主として根粒数・根粒重と関係があった. また, 根粒の数と生体重は, 根の乾物重と相関が見られた. 以上より, ダイズの生長と共生窒素固定は, 酸性雨が地上部に接触することによって抑制されると同時に, 根の生長が抑制されるため共生窒素固定速度が低下すること, 土壌のみの散布でも根粒に抑制的な影響を与えることがわかった.
  • 大川 泰一郎, 石原 邦
    1997 年 66 巻 4 号 p. 603-609
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の耐倒伏性に関与する程基部の挫折強度が著しく異なる中国117号およびコシヒカリとを用いて, 耐倒伏性に関与する形質が後代にどのように分離し遺伝する特徴があるかを検討した. F1は両親に比べ稈長が長く地上部が重かったが, 稈の挫折時モーメントが大きいため倒伏しなかった. F1の稈の挫折時モーメントが大きいのは, 中国117号の断面係数が大きい性質とコシヒカリの曲げ応力の大きい性質が組合さった結果であった. 断面係数についてのF2 150個体の頻度分布は3頂分布を示し, この形質は単一遺伝子ではなく2つ以上の遺伝子が関与している可能性があること, また遺伝率は0.69とやや大きく, 断面係数は選抜の可能性のある形質と考えられた. F2における断面係数と曲げ応力との間の遣伝相関係数は-0.70で, 両方の形質を育種目標として選抜することは困難であると考えられた. しかしながら, F2個体の中には, 中国117号と同様に断面係数が大きく, 曲げ応力も中国117号より約1.5倍大きい結果, 稈の挫折時モーメントが著しく大きい個体が3個体見い出された. さらに, これらの個体から得たF3個体は, 断面係数および曲げ応力の大きい性質を備えていた. 以上の結果から, 挫折強度の大きい品種・系統との交配を通じて, 断面係数および曲げ応力がともに大きく, 耐倒伏性の大きい性質を付与できる可能性のあることが示唆された.
  • 新田 洋司, 山本 由徳, 守屋 剛志
    1997 年 66 巻 4 号 p. 610-615
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の主茎の不伸長茎部における冠根原基形成の品種間差異について, 出現冠根数の異なる5品種の8.5~8.6葉齢個体を用いて解剖学的に検討した. 1) 分げつを含む個体当たり出現冠根数は, IR36, 日本晴, フジミノリ>コシヒカリ>アケノホシの順に多かった. この順序は, 分げつ数の多い順序と一致した. 2) 主茎の冠根原基数はIR36が最も多く, ついでフジミノリ, 日本晴で, コシヒカリ, アケノホシは少なかった. 一方, 冠根原基基部直径は, 冠根原基数の多い品種ほど小さかった. 冠根原基形成部位全体の茎軸長および辺周部維管束環側面積と冠根原基数との関係は明らかではなかった. いずれの品種でも, 各 "単位" でプロットした辺周部維管束環側面積と冠根原基数との間には有意な正の相関関係が認められたが, その1次回帰式の傾きであらわされる冠根原基形成率は, 冠根原基数の多い品種ほど高かった. 3) 以上の結果, 本実験で用いた5品種において, 主茎の冠根原基数は, 分げつ数および分げつを含む個体当たりの出現冠根数の多い品種ほど多いこと, また, 冠根原基数の多い品種では冠根原基基部直径の細いことが明らかとなった.
  • 徐 銀発, 大川 泰一郎, 石原 邦
    1997 年 66 巻 4 号 p. 616-623
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    前報において, 日本晴と最近育成された多収性品種タカナリの乾物生産過程を比較し, タカナリの乾物生産量が高い要因は主に純同化率 (NAR) が高いことにあり, また, 幼穂形成期以降タカナリのNARが高い要因の一つは受光態勢がよいことにあることを明らかにした. 本研究はNARに影響するもう一つの要因である個葉の光合成速度を検討し, 一日の変化からみても, 葉の老化過程においても, 上位3葉のどの葉位においても, タカナリの光合成速度は日本晴より著しく高いことがわかった. このことから, タカナリのNARが高く, 乾物生産量が大きいことは受光態勢がよいだけでなく, 個葉の光合成速度が高いことも密接に関係していることを明らかにした. さらに, 日本晴に比べてタカナリの個葉光合成速度が高いのは, 一日中タカナリの拡散伝導度が大きいことと, 葉の老化において高い拡散伝導度と葉肉の光合成活性がともに長く維持されたことに関係があることがわかった. さらに, 葉の老化過程においてタカナリの葉肉の光合成活性が高かった要因は主に炭酸固定効率とRubisco含量が高く維持されたことにあることがわかった.
  • 齋藤 和幸, 荒木 卓哉, 森 和一, 窪田 文武, 中山 薫
    1997 年 66 巻 4 号 p. 624-631
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    過去に報告されたショ糖合成酵素(EC 2. 4. 1. 13)で保存性の高い領域をもとにして一本鎖のオリゴヌクレオチドプライマーを作成し, カンショ塊根のポリ(A)+ RNAより合成したcDNAを鋳型としてPCRを行ったところ, 1,191bpのcDNA (IBSUS)が増幅された. IBSUSの塩基配列はバレイショの二種類のショ糖合成酵素cDNAの対応する領域と82%および86%の高い相同性を示した. 単子葉植物であるトウモロコシ, イネおよびオオムギのショ糖合成酵素とは76~77%とわずかに相同性が低かった. カンショ塊根におけるショ糖合成酵素の活性は, 葉身, 葉柄, ほふく茎および細根のショ糖合成酵素活性に比べて高かった. また, 塊根形成過程において, 根のショ糖合成酵素活性はショ糖含量の上昇にともなって著しく増加した. IBSUSをプローブとしたノーザンブロット分析では, 葉柄, ほふく茎, 細根および塊根において約2.4kbの一本のショ糖合成酸素mRNAが検出され, 部位別および塊根形成過程における根のショ糖合成酸素のmRNAレベルはショ糖合成酵素活性で得られた結果とよく一致した. また, 葉柄ではショ糖濃度を高めるとショ糖合成酵素の活性が増加した.
  • 井上 直人, 天野 高久, 江湖 暁子
    1997 年 66 巻 4 号 p. 632-639
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の湛水土壌表面直播での苗立ち率の品種間差異を, 特微のある国内外の7品種を用い, 播種期を変えて調査した. 平均水温17.9℃と22.7℃の条件における苗立ち率は, 前者の場合93%から33%, 後者は94%から18%と品種によって大きな差が認められた. 苗立ち率の低下の主な原因は, 浮き苗と死亡率の2つの独立した要因によるものであった. 低下の主要因は品種によって異なり, 浮き苗率と死亡率が共に少ない品種(Arroz da Terra)が認められた. 浮き苗率は草丈や種子根の伸長や苗の水中での見かけの重さとは明瞭な相関関係が無かったことから, 2葉期までの種子根自体の土壌への貫入能力の差が, 苗立ち率の品種間差異をもたらす主要な要因であると考えられた.
  • 平井 儀彦, 江原 宏, 土屋 幹夫
    1997 年 66 巻 4 号 p. 640-646
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネの器官別の生長係数と窒素濃度との関係を明らかにするため, 培養液濃度の違いによって生育様相を異にしたイネ品種アキヒカリの幼植物を用いて, 日毎に光強度を低下させた場合の茎葉部および根部のCO2収支を測定, 解析した. その結果, 茎葉部の生長呼吸量と茎葉部の乾物増加量との間, および根部の生長呼吸量と根の乾物増加量との間に, 各々高い正の相関が認められた. 茎葉部の生長呼吸量については, 葉身の乾物重および葉面積の増加量との間に各々極めて高い正の相関が認められたが, 葉鞘の乾物増加量との間には有意な相関は認められなかった. また, 個体および各部位の生長呼吸量は, 主に乾物増加と窒素増加が関与することが示された. これらのことから, 1g当たりの乾物増加に関わる生長呼吸量は, 窒素含有率の高い葉身では葉鞘より大きいものと考えられた. 一方, 生長係数は, 異なる培養液濃度条件下において大きく変化し, 個体, 茎葉部および根部の値はそれぞれ, 0.56-1.26, 0.44-1.11, 0.60-1.11g g-1 であった. また, 各部位の生長係数と乾物増加量当たりの窒素増加量(ΔN/ΔW)との間には正の相関が認められ, 根の生長係数は, 同じ値のΔN/ΔWで比較すると茎葉部に比べて高く, また, 回帰直線の傾きも大きかった. 本論文では, イネ器官の生長に伴う窒素増加と生長係数との間の定量的関係が示された.
  • 松江 勇次, 比良松 道一, 尾形 武文, 小田原 孝治
    1997 年 66 巻 4 号 p. 647-655
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    新形質米育成のための育種素材および赤米の調理・加工等の食味素材としての特性を解明することを目的として, 日本型在来赤米梗種(赤米種群)における精米の理化学的特性を明らかにした. 赤米種群のタンパク質含有率の変異は福岡県の奨励品種群(奨励品種群)が慨ね6.7%前後で分布したのに対して無肥料レベルにもかかわらず, 6.0~9.7%と広い範囲にわたって分布し, 平均値で奨励品種群に比べて1.1%高かった. アミロース含有率は9.7~26.4%と広い範囲にわたって分布し, 平均値で1%程度高い傾向を示した. 最高粘度は170~545 B.U. と広い範囲にわたって分布し, 平均値では奨励品種群に比べて100 B.U. 以上も低かった. ブレークダウンにおいても0~173 B.U. と広い範囲にわたって分布したが, 平均値では奨励品種群の約50%程度と小さかった. テクスチャーの粘着性は0~0.29T.U. と硬さ/粘着性比は0.00~842.00と広い範囲にわたって分布し, 平均値では奨励品種群に比べて粘着性は0.04T.U. 低く, 硬さ/粘着性比は77.60高かった. 以上のように, 日本型在来赤米種群の理化学的特性値は福岡県の奨励品種群に比べて広い範囲にわたって分布し, 平均値で比較するとタンパク質含有率は高く, アミログラム特性の最高粘度は低く, ブレークダウンは小さかった. また, テクスチャーの粘着性は弱く, 硬さ/粘着性比は大きかった. このような赤米にみられる理化学的特性の特殊性やその大きな変異は, 赤という色だけでなく低タンパク質米, 高タンパク質米, 低アミロース米および高アミロース米などの新形質米を作出するための有用な遺伝子資源としての可能性を示唆するとともに, 調理および加工方法など赤米の新たな利用面での基礎的知見を提供するものと考えられる.
  • 菅 洋, 高橋 秀幸, 武田 和義
    1997 年 66 巻 4 号 p. 656-662
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    葉長が遺伝的に異なるコムギ2品種を用いて, 葉の生長に関するいくつかのパラメーターについて制御環境下において研究した. 葉の生長についてのパラメーターの遺伝力を, それら2品種間の雑種第2代の測定値にもとづいて計算した. 葉の展開速度すなわち, 単位時間または単位葉長当たりの葉展開速度は両親品種で同じであったが, 平均葉長と平均1葉展開必要日数は葉長の差に依存して両親品種で異なった. 平均葉長と平均1葉展開必要日数の遺伝力はそれぞれ, 77.7%と85.2%であった. 雑種第2代においては, しかしながら, それらの2つの形質間には相関は認められなかった(r=0.152). 単位時間または単位葉長当たりの展開速度の遺伝力はそれぞれ, 55.5%と45.2%であった. このことより, 葉の展開速度(単位時間または単位葉長当たり)は, 選抜によって可変な形質であると推定された.
  • 山本 友英, 中田 和男
    1997 年 66 巻 4 号 p. 663-668
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    '紅丸', 'メークイン', および '男爵薯' の生長点培養由来の増殖シュートを用い, マイクロチューバー形成に及ぼすMS固型培地中のCCCとBAの影響を調べた. 28日間の培養で形成されたマイクロチューバーの数と生体重は, いずれも暗黒条件下で, CCC (500 mg L-1)及びBA (5 mg L-1)を含む培地の場合にもっとも高い値であった. この結果は, マイクローチューバーの生産のために International Potato Center (CIP) が提唱した塊茎形成培地が日本のこれら三品種にも適用できることを示している. この場合, CCC は特に培養初期におけるマイクロチューバー形成に効果的であり, また, 'メークイン' のマイクロチューバーの生体重は, 他の二品種のものに比べて低い値であることが認められた. 20℃の暗黒条件で CCC (500mgL-1) とBA (5mgL-1) を含む培地で2日間培養したシュートの腋芽基部が膨らみはじめ, 塊茎に転化する様相がSEMによって観察された.
  • FONSEKA Hemal Dhammike, 浅沼 興一郎, 一井 眞比古
    1997 年 66 巻 4 号 p. 669-674
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    バレイショ4品種(男爵薯, メークイン, デジマ, ニシユタカ)を供試し, 葉身の硝酸還元酵素(NR)活性を in vivo で測定し, また, 葉身と塊茎における窒索分布を生育の時期別に定量した. NR活性に有意な品種間差異があり, 平均値で比較すると, ニシユタカで最高値(6.08 NO2-μmol h<-1> g-1 生体重), メークインで最低値(同4.92)を示した. すべての品種で萌芽後30日目までに高い活性を示し, 生育とともに低下する傾向がみられた. NR活性は葉の全窒素含有率および葉の窒素集積量と有意な正の相関を示したが, 全乾物重や塊茎乾物重とは相関がみられなかった. 全品種とも生育に伴い葉の集積窒素が減少し, 一方で塊茎では増加し, 生育終期にはニシユタカを除く3品種でほぼ同程度の窒素が塊茎に集積した. また, 葉緑素計(SPAD)指示値の自然対数とNR活性との間には有意な直線関係(r=0.749***)が認められた. 窒素量について計算した収穫指数は男爵薯及びメークインで高く, デジマとニシユタカで低かった. 以上より, NR活性はバレイショの乾物生産と直接結びつかないものと結論した.
  • 平野 達也, 内田 直次, 東 哲司, 安田 武司
    1997 年 66 巻 4 号 p. 675-681
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    浮イネは水位の上昇に対して急速に節間を伸長させる. 深水下での生長を支えるには, 生長部位へより多くの光合成産物を供給することが必要であろう. 本研究では, 深水下における浮イネ葉身の光合成産物の供給能力を明らかにする目的で, 13Cを用いたトレーサー実験による光合成産物の転流速度とスクロース合成経路の鍵酵素であるスクロースリン酸合成酵素(SPS)の活性を調査した. 9.5葉期の植物体を第7葉身がほぼ完全に水没する水深で5日間処理を行う深水区と通常の湛水条件で生育させる対照区を設けた. 深水区の上位2葉(第9および第10葉身)からの13Cラベル炭素の転流速度は, 対照区より著しく高かった. SPS活性に関しては, 飽和基質条件下での最大活性(Vmax)と, 葉の生理的条件に近い濃度の基質と無機リン酸(活性抑制剤)を加えた条件下の活性(Vlimiting)の2種類の測定を行い, 両活性の比較から活性化率を求めた. 上位2葉におけるSPSのVmaxは両区でほぼ同じであるのに対し, Vlimitingは深水区が対照区よりも有意に高かった. すなわち, これらの葉身のSPSは深水下でより活性化されていた. また, SPSのVlimitingと13Cの転流速度との間には, 処理および葉位の違いを含めて高い正の相関があった. これらの結果から, 深水下の浮イネは葉のSPSをより活性化させることにより葉からの光合成産物の転流速度を増加させ, シンク器官の急速な生長を支えているものと考えられる.
  • 桃木 芳枝, 小栗 秀, WHALLON Joanne H.
    1997 年 66 巻 4 号 p. 682-690
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    植物の中心柱と皮層細胞の間にある原形質連絡糸で作用するアセチルコリンーアセチルコリン受容体系には, 動物の系と同様, アセチルコリン分解酵素(AChE)とアセチルコリン(ACh)を細胞内に遊離する C2+ の存在が考えられる. 本報では, 熱ストレス処理後のトウモロコシ芽生えの子葉鞘節におけるAChEの分布と Ca2+ の細胞内移動を組織化学的に精査した. Ca2+ はカルシウムグリーンで蛍光標識し, 共焦点走査レーザー生物顕微鏡を用いて検出した. 子葉鞘節における蛍光標識 Ca2+ は, おもに細胞内のデンプン粒中に検出され, 熱ストレスにより内皮細胞および皮層細胞に著しい Ca2+ 濃度の上昇が認められた. 内皮細胞の標識 Ca2+ を含むほとんどのデンプン粒は, 処理直後にはすでに形が崩れ, 崩れたデンプン粒からは標識 C2+ が細胞内に溶出した. これらのことから, 熱ストレス後, デンプン粒内の Ca2+ は, 熱ストレスによって活性化されて細胞内に溶出され, 細胞内 Ca2+ 濃度が上昇した結果と考えられた. また, 内皮細胞の熱ストレスに対する応答反応は皮層細胞より迅速であることを認めた. さらに, 熱ストレスによって内皮細胞のAChE活性も著しく上昇していることから, 熱ストレス後, 内皮細胞に検出された Ca2+ は, ACh の遊離に関与していると考察した.
  • 伊藤 亮一, 山岸 順子, 石井 龍一
    1997 年 66 巻 4 号 p. 691-697
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    カリウム欠乏が葉の水ポテンシャル, 浸透濃度と溶質濃度に対する影響を調査し, カリウム欠乏の葉の生長に対する影響を検討した. 異なる塩化カリウム濃度(5.0と0.2mM)の培養液を用いて溶液栽培したダイズ幼植物を実験に供試した. カリウム欠乏処理は葉の葉肉細胞数と細胞伸長の減少をもたらし葉の生長を抑制したが, 伸長生長中の葉の水ポテンシャルと浸透ポテンシャル, 含水率は影響を受けなかった. さらに, カリウム欠乏処理によって, 伸長生長中の葉のカリウム濃度は対照区に対して顕著に減少したが, その浸透濃度は両処理間で差はなかった. そこで,カリウム欠乏に対する浸透物質濃度の変化を調査したところ, 何種類かのイオン, 糖, アミノ酸の濃度が対照区に比べて有意に増大し, カリウム濃度の低下の約92%を補った. これらの結果は, カリウム欠乏によってもたらされる葉の生長の抑制は, 葉の水分生理的なパラメーターはほぼ対照区と同レベルに維持されながら起きることを示唆する.
  • CAN Nguyen Duy, 中村 新, 吉圧 智彦
    1997 年 66 巻 4 号 p. 698-705
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    早生のソルガム6品種を総当り交配し, 子実収量, 稈長, 出穂迄日数などについて, ヘテロシスの発現, 一般組合せ能力(GCA), 特定組合せ能力(SCA)を春播きと夏播きで推定した. GCA効果, SCA 効果ともに有意であった. いくつかの品種は収量に正のGCA, 稈長と出穂迄日数に負または小さい値のGCAを示し, 優れた親と考えられる. F1の半分以上で収量に高いヘテロシスがみられた. いくつかのF1は収量に高い正の値の, 稈長と出穂迄日数に負の値のヘテロシスを示した. 遺伝子型と播種期の交互作用は収量, 稈長, 出穂迄日数で有意であった. 遺伝子型と栽植密度の交互作用は春播きの収量では有意であったが, 夏播きでは有意でなかった. 従って夏播きで多収な品種の選択には, 栽植密度は変えなくともよいが, 夏播きで収量試験を行う必要がある. いくつかのF1は夏播きで多収であり, 子実収量を目標にして, 水稲早期栽培の後作へ導入の可能性があると考えられる.
  • 平 俊雄
    1997 年 66 巻 4 号 p. 706-707
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 玉置 雅彦, 田代 亨, 山本 由徳
    1997 年 66 巻 4 号 p. 708-709
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 山内 稔
    1997 年 66 巻 4 号 p. 710-713
    発行日: 1997/12/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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