植物の中心柱と皮層細胞の間にある原形質連絡糸で作用するアセチルコリンーアセチルコリン受容体系には, 動物の系と同様, アセチルコリン分解酵素(AChE)とアセチルコリン(ACh)を細胞内に遊離する C
2+ の存在が考えられる. 本報では, 熱ストレス処理後のトウモロコシ芽生えの子葉鞘節におけるAChEの分布と Ca
2+ の細胞内移動を組織化学的に精査した. Ca
2+ はカルシウムグリーンで蛍光標識し, 共焦点走査レーザー生物顕微鏡を用いて検出した. 子葉鞘節における蛍光標識 Ca
2+ は, おもに細胞内のデンプン粒中に検出され, 熱ストレスにより内皮細胞および皮層細胞に著しい Ca
2+ 濃度の上昇が認められた. 内皮細胞の標識 Ca
2+ を含むほとんどのデンプン粒は, 処理直後にはすでに形が崩れ, 崩れたデンプン粒からは標識 C
2+ が細胞内に溶出した. これらのことから, 熱ストレス後, デンプン粒内の Ca
2+ は, 熱ストレスによって活性化されて細胞内に溶出され, 細胞内 Ca
2+ 濃度が上昇した結果と考えられた. また, 内皮細胞の熱ストレスに対する応答反応は皮層細胞より迅速であることを認めた. さらに, 熱ストレスによって内皮細胞のAChE活性も著しく上昇していることから, 熱ストレス後, 内皮細胞に検出された Ca
2+ は, ACh の遊離に関与していると考察した.
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