日本作物学会紀事
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多収性水稲品種タカナリの光合成特性の解析
徐 銀発大川 泰一郎石原 邦
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1997 年 66 巻 4 号 p. 616-623

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抄録
前報において, 日本晴と最近育成された多収性品種タカナリの乾物生産過程を比較し, タカナリの乾物生産量が高い要因は主に純同化率 (NAR) が高いことにあり, また, 幼穂形成期以降タカナリのNARが高い要因の一つは受光態勢がよいことにあることを明らかにした. 本研究はNARに影響するもう一つの要因である個葉の光合成速度を検討し, 一日の変化からみても, 葉の老化過程においても, 上位3葉のどの葉位においても, タカナリの光合成速度は日本晴より著しく高いことがわかった. このことから, タカナリのNARが高く, 乾物生産量が大きいことは受光態勢がよいだけでなく, 個葉の光合成速度が高いことも密接に関係していることを明らかにした. さらに, 日本晴に比べてタカナリの個葉光合成速度が高いのは, 一日中タカナリの拡散伝導度が大きいことと, 葉の老化において高い拡散伝導度と葉肉の光合成活性がともに長く維持されたことに関係があることがわかった. さらに, 葉の老化過程においてタカナリの葉肉の光合成活性が高かった要因は主に炭酸固定効率とRubisco含量が高く維持されたことにあることがわかった.
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