日本作物学会紀事
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日本型在来赤米梗種における米の理化学的特性
松江 勇次比良松 道一尾形 武文小田原 孝治
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1997 年 66 巻 4 号 p. 647-655

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抄録
新形質米育成のための育種素材および赤米の調理・加工等の食味素材としての特性を解明することを目的として, 日本型在来赤米梗種(赤米種群)における精米の理化学的特性を明らかにした. 赤米種群のタンパク質含有率の変異は福岡県の奨励品種群(奨励品種群)が慨ね6.7%前後で分布したのに対して無肥料レベルにもかかわらず, 6.0~9.7%と広い範囲にわたって分布し, 平均値で奨励品種群に比べて1.1%高かった. アミロース含有率は9.7~26.4%と広い範囲にわたって分布し, 平均値で1%程度高い傾向を示した. 最高粘度は170~545 B.U. と広い範囲にわたって分布し, 平均値では奨励品種群に比べて100 B.U. 以上も低かった. ブレークダウンにおいても0~173 B.U. と広い範囲にわたって分布したが, 平均値では奨励品種群の約50%程度と小さかった. テクスチャーの粘着性は0~0.29T.U. と硬さ/粘着性比は0.00~842.00と広い範囲にわたって分布し, 平均値では奨励品種群に比べて粘着性は0.04T.U. 低く, 硬さ/粘着性比は77.60高かった. 以上のように, 日本型在来赤米種群の理化学的特性値は福岡県の奨励品種群に比べて広い範囲にわたって分布し, 平均値で比較するとタンパク質含有率は高く, アミログラム特性の最高粘度は低く, ブレークダウンは小さかった. また, テクスチャーの粘着性は弱く, 硬さ/粘着性比は大きかった. このような赤米にみられる理化学的特性の特殊性やその大きな変異は, 赤という色だけでなく低タンパク質米, 高タンパク質米, 低アミロース米および高アミロース米などの新形質米を作出するための有用な遺伝子資源としての可能性を示唆するとともに, 調理および加工方法など赤米の新たな利用面での基礎的知見を提供するものと考えられる.
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