日本作物学会紀事
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水稲の冠根原基の形成に関する研究 : 伸長茎部における冠根原基の形成
新田 洋司山本 由徳藤原 富起
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1998 年 67 巻 1 号 p. 56-62

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抄録

水稲の伸長茎部の連続横断切片を光顕観察し, 節横隔壁形成部と冠根原基との関係について検討した.その結果, 1)伸長茎部の各節横隔壁形成部も不伸長茎部と同様, 辺周部維管束環の形状にもとづいて, 茎の頂端側から基部側に向かって, 分断部I(葉鞘の中肋側で1~2箇所で分断)→分断部II(葉鞘からの大・小維管束の貫入によって多数箇所で分断)→非分断部の3部位に分けられた.2)冠根原基は, 辺周部維管束環が認められた止葉節と, それより基部側の各節横隔壁形成部の分断部IIのなかの茎軸方向の短い範囲に形成されていた.分断部IIでは, 辺周部維管束環が葉蛸からの大・小維管束の貫入によって分断されて冠根原基が形成される「場」が小さいために, 冠根原基の直径が小さく, 出現する冠根も細いと考えられた.3)頂端側の伸長茎部(止葉節とその基部側2節)では, 冠根原基数の多・少について, 節位の上下による一定の傾向は認められなかった.また, 伸長茎部では, 冠根原基と葉蛸の大・小維管束の数の対応関係は認められなかった.4)不伸長茎部における冠根原基の形成の様相と考えあわせると, 冠根原基形成部位を節横隔壁形成部付近の頂端側・基部側の2箇所と限定した従来の考え方は, 水稲では改めなければならないと考えられた.

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