抄録
水稲乳苗の葉齢増加に伴う活着特性の変化を明確にするために,育苗日数(5~9日間)と播種量(育苗箱当たり乾籾換算200gと300g)との組み合わせにより,葉齢と苗素質の異なる計10種の乳苗を育苗した.出芽器(32℃,暗黒)内に2日間置いて出芽させたのち,昼/夜温度が24/19℃の自然光型ファイトトロン内で育苗した.そして,移植後も同一温度条件下で生育させ,各苗の活着特性を比較検討した.葉齢2.8,3.0の苗の移植後8日目の根数は,葉齢2.1~2.6の苗と比べてわずかに多かった.しかし,葉齢が2.6より若い苗では出葉の停滞がなく活着がスムーズに進行するのに対して,葉齢が2.6より進んだ苗では出葉が停滞し植傷みを生ずることが明らかとなった.ただし,移植後4日間の出葉速度は,苗の総葉身長/総根長比と密接(r=-0.941)に関連することから,葉齢が2.6より若い苗であっても移植に伴う断根の程度が大きければ,移植後の出葉速度が低下し,植傷みが生じるものと推察される.また,播種量を乳苗の一般的な播種量(育苗箱当たり乾籾換算200g)の1.5倍とした場合,葉齢2.8,3.0の苗では移植後の出葉速度の低下がより顕著に認められ,移植後8日間のRGR(相対生長率)も低下したのに対し,葉齢が2.6より若い苗では播種量増加の影響はほとんど認められなかった.したがって,播種量を通常の1.5倍量としても,葉齢2.6までは活着への影響はごく小さいと推察される.