日本作物学会紀事
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68 巻, 2 号
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  • 鵜飼 保雄
    1999 年 68 巻 2 号 p. 179-186
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 立田 久善
    1999 年 68 巻 2 号 p. 187-193
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    通常の気象条件下において,窒素施肥条件の異なる圃場で栽培したイネの葯長,葯幅および充実花粉数を比較した.基肥窒素量を1m2当たり0,4,7,10,13gとした圃場で栽培したイネの場合,基肥窒素量が多くなるほど葯長,葯幅は短くなり,充実花粉数は減少した.また,基肥窒素量を1m2当たり4gまたは10g施用し,穂首分化期,幼穂形成期,減数分裂期に1m2当たり3g窒素追肥したイネと無追肥のイネの場合,基肥窒素量が1m2当たり4gのときは,無追肥に比較して幼穂形成期の追肥で葯長,葯幅が短くなり,充実花粉数も減少した.基肥窒素量が10gの場合も同様の傾向がみられたが,追肥時期の違いによる差は基肥窒素量が4gの場合よりも小さかった.これらのことから,イネの葯長,葯幅および充実花粉数には窒素施肥が大きな影響をおよぼしており,低温の影響を受けていない年でも,基肥窒素を多く施用した場合や幼穂形成期頃の追肥は,葯長や葯幅を短く,充実花粉数を減少させる.また,追肥時期の影響は基肥量の多少によって異なった.
  • 佐々木 良治, 後藤 克典
    1999 年 68 巻 2 号 p. 194-198
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲乳苗の葉齢増加に伴う活着特性の変化を明確にするために,育苗日数(5~9日間)と播種量(育苗箱当たり乾籾換算200gと300g)との組み合わせにより,葉齢と苗素質の異なる計10種の乳苗を育苗した.出芽器(32℃,暗黒)内に2日間置いて出芽させたのち,昼/夜温度が24/19℃の自然光型ファイトトロン内で育苗した.そして,移植後も同一温度条件下で生育させ,各苗の活着特性を比較検討した.葉齢2.8,3.0の苗の移植後8日目の根数は,葉齢2.1~2.6の苗と比べてわずかに多かった.しかし,葉齢が2.6より若い苗では出葉の停滞がなく活着がスムーズに進行するのに対して,葉齢が2.6より進んだ苗では出葉が停滞し植傷みを生ずることが明らかとなった.ただし,移植後4日間の出葉速度は,苗の総葉身長/総根長比と密接(r=-0.941)に関連することから,葉齢が2.6より若い苗であっても移植に伴う断根の程度が大きければ,移植後の出葉速度が低下し,植傷みが生じるものと推察される.また,播種量を乳苗の一般的な播種量(育苗箱当たり乾籾換算200g)の1.5倍とした場合,葉齢2.8,3.0の苗では移植後の出葉速度の低下がより顕著に認められ,移植後8日間のRGR(相対生長率)も低下したのに対し,葉齢が2.6より若い苗では播種量増加の影響はほとんど認められなかった.したがって,播種量を通常の1.5倍量としても,葉齢2.6までは活着への影響はごく小さいと推察される.
  • 千布 寛子, 芝山 秀次郎, 有馬 進
    1999 年 68 巻 2 号 p. 199-205
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    畑土壌にキトサン粉末を混和処理し,ハツカダイコンを供試作物として,その地上部及び地下部の生育への影響を調査した.ハツカダイコン1個体当たりの葉面積及び地上部乾物重は,0.1%以上のキトサン混和処理区で生育促進効果が見られ,0.5及び1%処理区では成長量は無処理区の約2倍となったが,処理効果は子葉より本葉で大であった.地下部では,主根の長さや1次側根数はキトサン処理区と無処理区で大差はなかったが,キトサン処理区では太い1次側根数が多く,また1次側根の単位長当たり2次側根数が無処理区より著しく多かった.根毛については,キトサン処理区は無処理区に比べ,特に各側根に発生する根毛が長く,発生密度も高い傾向が見られた.
  • 松江 勇次, 尾形 武文
    1999 年 68 巻 2 号 p. 206-210
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    良食味米生産技術の改善上の知見を得るために,水稲の稈長+穂長の大,中,小別とそれぞれの穂に着生している米の食味および理化学的特性との関係を検討した.稈長+穂長が大の分げつは低次位低節位からの発生で,茎は太く,穂に着生した玄米の千粒重は重かった.稈長+穂長が大の穂に着生した米の食味は稈長+穂長が中,小の穂に着生した米の混合米に比べて外観は同程度であったが,味が優れ,粘りが強くなって総合評価は優れた.稈長+穂長が大の穂に着生した米の理化学的特性は稈長+穂長が中,小の穂に着生した米に比べてタンパク質含有率は低く,アミロース含有率は高かった.また,アミ口グラム特性の最高粘度は高く,ブレークダウンは大きく,テクスチャー特性のH/-H,H/A3は小さい傾向を示した.稈長+穂長の大きさ別の玄米千粒重とタンパク質含有率,テクスチャー特性のH/-HとH/A3との間にはそれぞれ負の相関関係が,アミロース含有率,アミ口グラム特性の最高粘度とブレークダウンとの間には正の相関関係が認められた.したがって稈長+穂長が大,中,小の穂に着生した米の食味および理化学的特性の違いは,稈長+穂長の大きさと密接に関係のある米粒の充実度を示す玄米千粒重の差異によるものと考えられた.これらのことから良食味米生産技術の改善という視点からみて,稈長+穂長が大きい稲体を確保することが必要であり,そのためには低次位低節位からなる茎の太い分げつの早期確保と充実をはかり,千粒重の重い玄米を生産することの重要性が示唆された.
  • 岡留 博司, 栗原 昌之, 楠田 宰, 豊島 英親, 金 静逸, 下坪 訓次, 松田 智明, 大坪 研一
    1999 年 68 巻 2 号 p. 211-216
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    窒素施肥条件が異なる試料米を対象に,これら試料米のタンパク含有率や食味の差異を検出可能な米飯1粒による多面的物性評価法を検討した.供試試料には窒素施肥条件の異なる6つの処理区で栽培した日本稲3品種(ヒノヒカリ,レイホウ,ユメヒカリ)を用いた.米飯1粒の多面的物性測定として,米飯粒厚に対して圧縮率が異なる3種類の圧縮試験を行った.その結果,高圧縮試験(圧縮率90%)による米飯粒全体の硬さは,窒素施肥条件よりも品種によって大きく異なっていた.一方,低圧縮試験(圧縮率25%)による米飯粒の表層の硬さが,タンパク質含有率と有意な正の相関を示し,同一品種内の窒素施肥やタンパク含有率の差異を検出可能であることを明らかにした.また,窒素施肥量の増大に伴って,米飯粒の表層が硬くなり,食味が低下することが示された.中圧縮試験(圧縮率45%)による米飯粒の中層のバランス度(粘りと硬さの比)は,タンパク質含有率よりも食味「総合評価」との相関が高かった.これより,米飯1粒の多面的物性測定で,窒素施肥条件が異なる試料米のタンパク質含有率の差異検出や食味評価が可能であることを明らかにした.
  • 佐藤 暁子, 小綿 美環子, 中村 信吾, 渡辺 満
    1999 年 68 巻 2 号 p. 217-233
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    東北農業試験場で育成中のパン用秋播コムギ系統の東北205号を用いて,製パン適性に及ぼす窒素追肥時期の影響について検討するとともに,粗タンパク含量とパン比容積の関係について3品種の比較を行った.東北205号に対する融雪期から開花1週間後までの窒素追肥は,60%粉の粗タンパク含量,セディメンテーション値,ファリノグラムの生地形成時間,生地の安定度及びバロリメーター・バリュー,エキステンソグラムの伸張度,パン比容積及びパン内層白度を増加させた.また,東北・北陸地域の公立農業試験場で栽培された東北205号,コユキコムギ及びナンブコムギについて60%粉の粗タンパク含量とパン比容積の関係について検討したところ,いずれの品種についても,粗タンパク含量12%までは粗タンパク含量の増加に伴いパン比容積が増加する傾向が認められた.
  • 片山 健二, 田宮 誠司
    1999 年 68 巻 2 号 p. 224-230
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    サツマイモの主な食用8品種を2年間供試し,生育に伴う塊根の収量及び品質成分の変化を調査して品種間差異を明らかにするとともに,乾物率からみた成熟期の推定を試みた.ヘルシーレッド,コガネセンガン,沖縄100号,ベニアズマは塊根の早期肥大性を示した.ベニコマチ,紅赤は乾物率の増加が早く,植え付け後70日頃で30%を超えた.生塊根の糖度は生育初期にベニコマチが最も高かった.蒸し塊根の糖度は生育初期にベニコマチが高く,90~95日以降はベニアズマ,コガネセンガン,ベニコマチが高かった.分散分析の結果,塊根収量,塊根1個重,乾物率,生塊根の糖度,生塊根のショ糖含量,生塊根のブドウ糖含量,蒸し塊根の精度,食味について品種間と生育日数間で有意な差がみられ,蒸し塊根の糖度を除く7形質で交互作用が認められた.多くの掘り取り日で乾物率は食味との間に0.8以上の正の有意な相関を示し,蒸し塊根の糖度も食味との間に正の有意な相関を示した.生塊根の糖度及びショ糖含量と食味との間には一部の掘り取り日で正の有意な相関がみられたが,塊根収量,塊根1個重及びブドウ糖含量と食味との間には全生育期間で正の有意な相関はみられなかった.品質からみた成熟期を示す指標として乾物率の変化から成熟期を推定した結果,ヘルシーレッド,フサベニ及びベニコマチが早生,紅赤,沖縄100号及び高系14号が中生,ベニアズマとコガネセンガンが晩生であると分類できた.
  • 福岡 律子, 西村 実, 小川 紹文, 梶 亮太, 平林 秀介, 深浦 壮一
    1999 年 68 巻 2 号 p. 231-234
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲の直播栽培用良食味品種の育成を目的として,低温発芽性の優れた外国品種を日本の良食味品種に戻し交配し,その後代系統について低温発芽性に関して検定と選抜を繰り返し,低温発芽性の極めて優れた系統を得た.まず,日本稲10品種および直播向け外国稲10品種について低温発芽性検定を行った結果,供試した外国稲の多くは優れた低温発芽性を備えていることがわかった.そこで,これらの外国稲の一部にコシヒカリ,キヌヒカリ,ヒノヒカリを反復親として戻し交配を行い,コシヒカリ3/M202,ヒノヒカリ3/M202,コシヒカリ3/Italica Livorno,コシヒカリ3/Mutashali,キヌヒカリ3/Mutashaliの合計5組合せのBC2F2について低温発芽性の検定を実施したところ,全ての組合せで反復親の日本稲より極めて高い低温発芽性を有する系統が存在することが明らかになった.特に,コシヒカリ3/M202(66系統),ヒノヒカリ3/M202(51系統),コシヒカリ3/Mutashali(51系統)の組合せから低温発芽率(置床7日後における25℃での発芽率に対する15℃での発芽率)が81%を越える系統がそれぞれ8系統,11系統,1系統見いだされた.次に,ヒノヒカリ3/M202で低温発芽性の優れていた系統に,さらにもう一回ヒノヒカリを交配しBC3F2世代(35系統)で再び低温発芽性の検定を行ったところ,低温発芽性の極めて高い系統が5系統得られた.以上の結果から,M202などの外国稲のもつ優れた低温発芽性を日本の良食味品種に導入し直播栽培用良食味品種を育成することは可能であると考えられた.
  • 黒田 栄喜, 東 直邦, 岡田 貴, 阿部 進, 平野 貢, 村田 孝雄
    1999 年 68 巻 2 号 p. 235-244
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1970年代半ば以降現在までの東北地方における主要な普及品種(4)と寒冷地を対象に育成された多数の新規育成品種(21~24品種)を用いて,2ヵ年にわたり収量性,各収量構成要素および収穫指数を比較した.坪刈り収量は,96年が716~845g/m2,97年は696~799g/m2であり,両年とも100~130g/m2程度(15~18%)の品種間差異がみられた.新規育成品種の中には750g/m2以上の品種が96年は20,97年は15あり,実用的形質が改善されるとともに,収量性においても向上している品種がいくつか認められた.収量が高かった新規育成品種は,普及品種に比べてシンク容量が拡大しており,その要因は品種により異なっていた.すなわち,1)m2当り籾数を増大することによりシンク容量を拡大している品種;奥羽339号,奥羽316号等,2)m2当り籾数がほぼ同じであっても玄米千粒重がやや大きくシンク容量を拡大している品種;ふくひびき,秋田59号,まなむすめ等,3)m2当り籾数がやや少ないものの玄米千粒重が明らかに大きいことによりほぼ同程度のシンク容量を確保している品種;おきにいり,岩南6号等,4)m2当り籾数,玄米千粒重およびシンク容量ともにほぼ同じ範囲にある品種;はなの舞,じょうでき等の4つのグループに分類された.以上の結果から,寒冷地を対象とした多収性品種を育成するためには,m2当り籾数を増大することあるいはm2当り籾数を維持するとともに玄米千粒重を大きくすることによってシンク容量を拡大することが重要であると推察した.
  • 〓 再彬, 一井 眞比古
    1999 年 68 巻 2 号 p. 245-252
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネ(Oryza sativa L.)品種オオチカラのM2種子を1μM2,4-D(2,4-ジクロルフェノキシ酢酸)で培養し,得られた約60000個体のM2幼植物集団から26個体の2,4-D耐性変異体を選抜した.そのうち,M3世代でも高度な2,4-D耐性を示し,かつ形質の分離も認められなかったRM109を2,4-D耐性突然変異体であると判断し,その特性を解析した.RM109及び野生型オオチカラ幼植物を寒天培地で培養したところ,RM109幼植物の根には側根がまったく観察されなかった.また,オオチカラの種子根は鉛直方向に伸長するが,RM109のそれはオオチカラとは顕著に異なり,斜め方向に伸長した.RM109種子根の組織を光学顕微鏡で観察したところ,側根原基が全く観察されず,また分化領域及び分裂領域の内鞘細胞数がオオチカラの72%~84%であり,オオチカラより有意に少なかったことから,RM109の無側根は内鞘細胞の分裂異常に起因すると考えられた.RM109種子根根冠の平衡細胞内におけるアミロプラストの数はオオチカラのそれとほぼ同じであったが,アミロプラストの大きさはオオチカラの49%~57%であり,オオチカラのそれより顕著に小さく,RM109種子根の重力屈性異常は根冠の平衡細胞内におけるアミロプラストの大きさに起因すると推察された.RM109が高度な2,4-D耐性を示すことを併せ考えると,側根の分化や根の重力屈性は内生オーキシンと密接に関連することが示唆される.次に,RM109とオオチカラとの交雑後代及びそれらの両親の幼植物における2,4-D耐性を調査したところ,F1は耐性型であり,F2では耐性型と感受性型が3:1に分離した.これらの結果から,RM109の2,4-D耐性,無側根性及び種子根の重力屈性異常は単因子優性遺伝子(Lrt 1)に支配されていると推察した.
  • 吉田 智彦, Haryanto TOTOK Agung Dwi, CAN Nguyen Duy
    1999 年 68 巻 2 号 p. 253-256
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    トウジンビエ(Pennisetum typhoideum Rich.)集団を晩夏に播種して子実収量や収量関連の形質について2回の循環選抜を行った.選抜により,直接選抜した形質である一株穂数,一穂重,一穂粒重,一株粒重が増加した.また同時に草高,地上部重,収穫指数,穂長も増加した.2回選抜集団での遺伝獲得量から推定した遺伝率の値は,一株穂数が0.47,一穂重が0.67,一穂粒重が0.47,一株粒重が0.90と比較的高い値で,さらなる選抜の効果があるものと思われる.一株粒重と収量関連形質の遺伝相関が認められ,子実収量の向上を目的とした収量関連の形質による間接選抜も有効であると思われる.
  • 坂上 潤一, 礒田 昭弘, 野島 博, 高崎 康夫
    1999 年 68 巻 2 号 p. 257-265
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネ栽培種のO. sativa L.とO. glaberrima Steud.の成熟後における生育の特性を明らかにするために,O. sativa 10品種,O. glaberrima 5系統を供試して,成熟期の生育状態と成熟後の分げつ発生および個体生存の差異を刈取区と無刈取区について,生育に適した温度条件,長・短日条件下で比較した.成熟期の茎部のデンプン含有量(率)はO. sativaがO. glaberrimaに比べて高く,茎切片の節から伸長する総節根数,側芽の総葉身長もO. sativaが高い傾向を示した.成熟(刈取)後には両種とも新しい分げつが発生した.長日無刈取区における成熟期以降の生存茎数は,高位分げつの発生により一時的にO. glaberrimaが多くなったが,それ以降はO. sativaの方が常に多かった.また長日条件では短日条件よりも多く,無刈取区では刈取区よりも多い傾向があった.成熟後約8ヵ月(250日)の生存個体はO. glaberrimaが0で,全ての品種の個体が枯死した.O. sativaでは日本型の品種の生存率が高いのに対し,日印交雑を含めた印度型は低く,印度型の一部の品種では全ての個体が枯死した.長日条件は生存期間を延ばす方向に影響を及ぼした.このことから,基本的にはO. sativaとO. glaberrimaの大部分は成熟(刈取)後も分げつの発生によって生存を継続し,潜在的な多年生の特徴を持つと考えられた.成熟期の生育状態,成熟後の分げつの発生および個体の生存からみて,多年生的性質はO. sativaが強くO. glaberrimaは極めて弱いが,O. sativaの中にはO. glaberrimaの系統と同様に枯死する品種がみられ,種内変異が大きいと考えられた.
  • 川崎 通夫, 松田 智明, 新田 洋司
    1999 年 68 巻 2 号 p. 266-274
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ジャガイモ塊茎のプラスチド-アミロプラスト系におけるデンプンの蓄積過程とその微細構造的特徴を光学顕微鏡と電子顕微鏡で観察した.電子顕微鏡観察によると,やや扁平な楕円体もしくは卵形のアミロプラストは単粒デンプンを形成し,大型化しても増殖することが認められた.プラスチドおよびアミロプラストは篩部周辺の新生した柔細胞において著しい増殖とデンプン粒の形成を行い,内皮層と周辺髄の柔細胞に多量のデンプンを蓄積することが明らかになった.プラスチド内のストロマとアミロプラスト内に局在して存在するストロマには,様々な構造物が観察された.好オスミウム性顆粒は密集した高電子密度の内膜系において形成されていた.また,密集した高電子密度の内膜系は,一部の膜を形成中のデンプン粒近傍まで伸長させて,細胞質からデンプン合成の場へ同化産物などのデンプン合成に必要な物質を効率的に輸送する機能をもつと考えられた.また,顆粒状物質が単膜によって包まれた構造物である膜包体は,その一部の包膜を形成中のデンプン粒の方向へ伸長させていることが認められた.さらに,膜包体内部に認められた顆粒状物質は,デンプン粒の表面付近にも分布していた.これらのことから,膜包体内に存在すると報告されているブランチングエンザイムが,膜包体内で合成されデンプン合成の場へ供給されていると考えられた.さらに,従来含鉄物質であるフィトフェリチンと考えられてきたプラスチド-アミロプラスト系内に認められる膜に包まれていない集合した顆粒は,塩基性ビスマスの染色反応から多糖類であることが明らかになった.この多糖類は,プラスチドおよびアミロプラスト内に取り込まれた糖の余剰分で一時的に形成されたもので,デンプンの合成と蓄積の調節を行っていることが示唆された.光学顕微鏡観察では,偏心円状の層構造がデンプン粒に認められた.以上の観察から,ジャガイモ塊茎のアミロプラストは単粒デンプンの形成を局在させたストロマ部分で局部的,集中的に行うと考えられた.
  • 栗山 昭, 渡辺 克美
    1999 年 68 巻 2 号 p. 275-277
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    液体窒素中に保存したイネ(Oryza sativa L. cv. Nipponbare)培養細胞を再培養する際の培地に含まれるアミノ酸の種類と,細胞の生存活性の関係を調べた.それによると,グルタミンやアスパラギン酸を添加した培地では,従来の培地と比べ高い生存活性が得られたのに対し,グリシンは細胞の生存活性を低下させるはたらきがあることがわかった.これらの結果から,融解後の培養に用いる培地に適当なアミノ添加することにより,凍結保存したイネ細胞の生存率を高めることができることが明らかになった.
  • 大矢 徹治, 石井 龍一
    1999 年 68 巻 2 号 p. 278-282
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズ品種エンレイから作出された根粒超多量着生変異体En6500は,根粒を多量に着生するが,生長速度が低いとされている.本研究では,En6500における根粒着生特性および植物体の生長特性を調べ,その生長速度が低い原因を探ろうとした.根粒着生特性については,まず,植物1個体当たりの根粒乾物重は,En6500がエンレイを上回っていた.それは,根粒1粒重が大きいことによるのではなく,根粒数が多いことによるものであった.さらに,単位根乾物重当たり根粒乾物重は,En6500がエンレイに比べてはるかに大きく,同じ乾物重で維持している根粒が,En6500で過剰となっていることが示唆された.次に生長特性を調べた.最大葉面積期における相対生長率は,En6500がエンレイを下回っていた.それは主に純同化率が低いことによるものであった.主茎葉の光合成速度もEn6500の方がエンレイよりも低く,En6500の純同化率の低さを裏付けていた.さらに,En6500では,葉への窒素分配割合が小さく,また,その窒素が光合成に利用される効率も低かった.その結果,窒素増加量に対する乾物増加量,すなわち窒素利用効率(NUE)は,En6500の方がエンレイよりも低くなっていた.これらのことから,En6500では,NUEが低く,そのことが根粒を多量に着生しても生長に結びつかない一つの原因となっていると考えられた.
  • 福田 直子, 湯川 智行
    1999 年 68 巻 2 号 p. 283-288
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ソラマメの非構造性炭水化物(nonstructural carbohydrate,以下NSC)含有率と耐雪性との関係を明らかにする目的で,耐雪性が強,中,弱の3品種を用い,さらに播種期を変えることにより根雪前の生育量とNSC含有率を変化させて耐雪性との関係について検討した.また同じ3品種について積雪下でのNSC含有率と雪害程度の変化を調査した.播種期が早い場合,耐雪性中および弱品種は根雪54日の条件下でほぼ全ての個体が枯死したが,耐雪性強品種は80%程度の越冬株率を示した.3品種ともに播種期が遅いはど耐雪性が強くなり,根雪前の生育が出芽直後である場合,子葉のNSC含有率は15%以上と高かった.耐雪性強品種の子葉のNSC含有率は他の品種より高くなかったが,早い播種期では茎葉と根のNSC含有率が他の2品種よりも高かった.このことから耐雪性中,弱品種は種子栄養に依存した状態で越冬する場合に耐雪性が向上し,耐雪性の強い品種はより多くのNSCを茎葉や根に蓄積するために早い播種期においても耐雪性が強いと考えられた.積雪下で葉と茎のNSCは急激に減少し,耐雪性中および弱品種のNSC含有率は根雪36日後に葉は1%,茎は2%より低くなり,これ以後雪害枯死葉面積率が急速に増加した.これに対して耐雪性強品種のNSC含有率は2%程度高く推移し,ほとんど雪害を受けなかった.このことから積雪下で茎葉のNSC含有率が一定以上である場合に雪害を受けにくいと考えられた.
  • 福田 直子, 鳥山 和伸, 松村 修, 湯川 智行, 小林 正義
    1999 年 68 巻 2 号 p. 289-295
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    暖地積雪地域の雪害に対する融雪水の影響を明らかにする目的で,植物体を不織布で被覆するトンネル区と露地区とを設け,ソラマメ葉の無機養分(K,Ca)の含有量や葉面における分布を調査した.露地区では融雪水は積雪初期から1日平均15mm流下したが,トンネル区内に流下する融雪水量は露地区の約60%であった.融雪水のpHは一時的に4を下回る酸性であった.積雪下で雪害は著しく進行し,露地区の全ての葉が根雪52日後には壊死したのに対し,トンネル区の壊死葉面積率は20%と低かった.葉中のKの含有量は根雪期間中に低下し,トンネル区よりも露地区で大きく低下する傾向を示した.一方,Caの含有量は露地区で低下したが,トンネル区での低下は認められなかった.また,葉の壊死葉面積率が高いほどCa含有量が低いという関係が認められた.さらに消雪後の健全葉と一部分が壊死した葉の生存部分のK,Ca含有量を測定した結果,両元素とも部分壊死葉における含有量が低かった.また,消雪後の葉面におけるこれらの養分の分布と含有量をX線マイクロアナライザを用いて分析したところ,Kは壊死部分に少なく生存部分に多いのに対して,Caは壊死部分に多く生存部分に少ないことが明らかになった.以上の結果から積雪下では,葉の無機養分は連続的に流下する酸性の融雪水によって溶脱(リーチング)され,減少したと考えられる.特にCa含有量の低下は葉の壊死との関連が認められた.また,無機養分含有量の低下は病原菌や水分ストレスへの耐性を低下させることから,融雪水は作物の雪害を助長すると考察した.
  • 大段 秀記, 大門 弘幸
    1999 年 68 巻 2 号 p. 296-300
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    マメ科緑肥作物として利用されているクロタラリア(Crotalaria juncea L., 品種:ネマコロリ)を窒素集積土壌におけるクリーニング作物として導入するための基礎的知見を得るために,窒素施用量の異なる火山灰土壌を充填した大型コンテナポットで栽培し,重窒素標識肥料を用いて窒素吸収量を供給される窒素の由来別に調査し,トウモロコシ(Zea mays L., 品種:ゴールドデントDK789)と比較した.播種後60日目の地上部乾物重は,両作物ともに過剰施用区(70gN/m2)が少量施用区(3gN/m2)よりも多く,両区間の差はトウモロコシで著しく大きかった.過剰施用区ではトウモロコシはクロタラリアの約3.5倍の乾物生産を示した.地上部全窒素含有量は乾物重と同様に,両作物ともに播種後60日目では過剰施用区が多く,少量施用区との差はトウモロコシのほうが大きかった.過剰施用区ではトウモロコシの全窒素含有量はクロタラリアの約1.8倍であった.クロタラリアの地上部全窒素含有量に占める固定窒素の割合は,少量施用区では約75%であったが過剰施用区では1%未満であり,根粒の着生はほとんど認められなかった.過剰施用区におけるクロタラリアの吸収窒素量は1m2あたり換算で約35gとなり,窒素集積土壌においては固定窒素に依存せずに多量の窒素を吸収することが示された.すき込み資材の分解速度の指標の一つであるC-N率は,クロタラリアで約15と低く,刈取り後に有機物資材として利用する際に容易に分解されることが示唆された.
  • 脇山 恭行, 井上 恒久, 小山 信明
    1999 年 68 巻 2 号 p. 301-305
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    九州久住高原において,4ヵ年のランドサットTMデータを用いてイネ科牧草の一番草の収量予測を試みた.重回帰モデルによる収量予測式を導くために,使用する説明変数を検討した.RVI,NDVI,TM4バンドと牧草収量との間には,いずれも高い相関がみられた.衛星観測日から採草日までズレがあるため,その期間の牧草の生育量を表す指標についても検討した.その結果,観測日から採草日までの平均気温と収量との間に相関がみられた.以上のことから,予測式の説明変数に,RVI,NDVI,TM4のいずれか1つと観測日から採草日までの有効積算気温の2変数を用いた場合,さらにこれらの変数に他のTMバンドを組み合わせた場合の重回帰分析を行った.解析の結果,RVI,NDVI,TM4のいずれも,TM2と有効積算気温を組み合わせた予測式が比較的高い寄与率を示した.今回は,TM4,TM2および有効積算気温を用いた重回帰式が最良であった(r2=0.64~0.72).これら各年次の予測式を他年次に適用して再現性の検討を行ったが,再現性は低かった.そこで,実用化のための予測式の精度向上の方法および再現性の低い原因について考察した.気温に影響を与える採草地の標高および採草地の傾斜,方位角度を考慮した積算日射量と収量との間に,相関はみられなかった.観測日から採草日までの牧草の生育量をその期間の有効積算気温で表したが,代わりに生育モデルを用いた予測が有効であると思われた.また,衛星観測時の大気の影響が示唆され,大気補正の導入も必要と考えられた.
  • 佐藤 暁子, 小綿 美環子, 中村 信吾, 渡辺 満
    1999 年 68 巻 2 号 p. 306-309
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    東北農業試験場で育成中のパン用秋播系統の東北205号の製パン適性に及ぼす収穫時期の影響を検討した.開花後30,36,40,45,51日に収穫した子実の水分含量は,それぞれ46.2, 42.1, 29.4, 22.8, 25.3%であった.収穫後の各子実は,35℃の通風乾燥機で11%まで乾燥させた.開花後30日に収穫した子実では,開花後40日の適期に収穫した子実に比べ,粉灰分が増加し,千粒重,ミリングスコア,セディメンテーション値,ファリノグラムのバロリメーター・バリュー,エキステンソグラムの伸張度及びパン比容積が低下した.開花後36日に収穫した子実では,ファリノグラムのバロリメーター・バリューがやや低下したが,その他の生地特性値やパン比容積は開花後40日以降に収穫したものとほぼ同程度であった.開花後40~51日までの子実では,生地物性や製パン適性の有意な変化は認められなかった.これらより,開花後30日の収穫は製パン適性を低下させるが,開花後36日~51日に収穫した子実では,製パン適性は大きな変化がないと考えられた.
  • 山本 晴彦, 岩谷 潔, 鈴木 賢士, 鈴木 義則, 平嶋 隆祥, 濱野 貴志
    1999 年 68 巻 2 号 p. 310-315
    発行日: 1999/06/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    九州・山口地方における1997年11月から1998年6月にかけての麦作期間は,11月中下旬の長雨,暖冬,登熟期の異常高温と多雨などの異常気象となった.このため,1998年産麦は長雨による出芽不良,登熟期のおける湿害と赤かび病の蔓延により収穫が激減し,平年作を大きく下回った.とくに,熊本県では小麦の作況指数が8と近年稀にみる記録的な凶作となったのを始め,九州北部の各県では小麦および大麦の作況指数が40~50台と著しく不良の年であった.福岡県内の営農組合を対象とした現地調査から,二条大麦(品種:ニシノチカラ)は播種前後の異常降雨による土壌水分の過多の影響により著しい出芽不良となり,出芽率は大きく低下した.1m2当たりの穂数は45本であり,収量は平年単収332kg/10aを大きく下回る48kg/10a(平年比:14%)に留まった.
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