抄録
早期水稲品種の「コシヒカリ」と「きらり宮崎」の出穂期の早晩は移植から幼穂形成までの気象要因によって大きく影響される.本報では移植後時期別に処理した日長が出穂反応に及ぼす影響を宮崎県総合農業試験場内でポット試験で検討した.移植期から出穂期までの短日条件下において栽培した場合,コシヒカリの出穂はきらり宮崎より1日早くなり出穂期の逆転現象が確認された.両品種の出穂期の逆転現象はコシヒカリときらり宮崎における基本栄養生長性の違いによるものと考えられた.早期水稲コシヒカリおよびきらり宮崎の感光性は幼穂形成始め前約30日(分げつ始め5日後)から幼穂形成期にかけて短日に感応し,その程度が最も大きい時期は幼穂形成始め前18~9日と推察された.きらり宮崎では短日処理による出穂日数の減少はコシヒカリより小さかった.本実験の結果から,1998年において観察された両品種の出穂の逆転現象は,4~5月の高温および寡照で可消栄養生長期間(感温性部分十感光性部分)が大きく短縮し幼穂形成が促進され,その程度が基本栄養生長期間の短いコシヒカリにおいて特に大きかったことによると考えられる.