日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
乾物生産からみたイネの干ばつ抵抗性の品種・施肥レベル間差異に対する耐性と回避性の寄与度の定量的評価
藤井 道彦堀江 武
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 70 巻 1 号 p. 59-70

詳細
抄録

水ストレス強度と施肥レベルを異にしたイネ3品種のポット実験と,10品種に異なる期間の水ストレス処理を与えた圃場実験に基づき,イネの干ばつ抵抗性の品種・施肥レベル間差異に対する耐性と回避性の寄与度を乾物生産を中心に定量的に評価した.耐性を,ポット実験における各品種・施肥レベルの湛水区に対する相対値で表した乾物生産が基準値まで低下したときの葉身水ポテンシャル(LWP)で表すと,耐性の品種間差異は日中のLWPで約0.21MPa,夜明け前のLWPで約0.04MPaであった.一方,施肥レベル間では日中のLWPで約0.74MPa,夜明け前のLWPで約0.16MPaと,より大きかった.葉身枯死率と個体生存率でみた耐性には顕著な品種間差異があった.水ストレス下でのLWPとしてとらえた回避性の圃場における差異は,ポット実験に供試した3品種ではロ中のLWPで0.29MPa,夜明け前のLWPで0.14MPaと,耐性の差異よりも約50%以上大きかった.ポット実験においては回避性の方が約2倍大きかった.さらに,圃場での10品種の乾物生産と葉面積の生長の差異と回避性との間には密接な相関関係が認められた.また,ポットでの回避性の施肥レベル間差異は品種間差異よりも大きく,また耐性の施肥レベル間差異よりも大きかった.さらに,栄養生長期から継続した干ばつ条件下の収量は収穫時乾物重と密接な関係にあった.これらの結果から,回避性の差異は耐性の差異より約50%以上大きく,LWPは異なる品種や栽培方法間での干ばつ抵抗性の評価に有効な指標となり得ることが示唆された.

著者関連情報
© 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top