抄録
サトイモにおける13C-光合成産物の各器官への分配を検討した.生育段階を変えて地上部全体に13CO2を供与し,7日後に各器官における13C-光合成産物の分布割合を調べた.生育前期は葉身と葉柄,中期は葉身,葉柄および塊茎,後期では塊茎と,生育段階が進むにつれて光合成産物の主な受容器官が変化していった.孫イモ肥大始期に,塊茎肥大特性の異なる3品種を供試して,子イモ葉身が着生した個体における親イモ葉身および子イモ葉身に,また,子イモ葉身を切除した個体における親イモ葉身にそれぞれ13CO2を供与し,5日後に各器官における13C-光合成産物の分布割合を調べた.親イモ葉身の13C-光合成産物の40~65%が塊茎に分配されたが,このうち子イモ用品種の烏播は子イモ,親子イモ兼用品種の赤芽は子イモと親イモ,親イモ用品種の台湾芋は親イモへの分配が多かった.この傾向は,子イモ葉身を切除しても変わらなかった.子イモ葉身の13C-光合成産物の約60%が塊茎に分配された.このうち烏播と赤芽はその全てが子イモと孫イモに,台湾芋ではこれに加え親イモにも分配された.子イモ葉身の光合成産物が塊茎肥大,とりわけ分球イモの肥大に貢献していることがわかった.以上のような親イモ葉身,子イモ葉身の13C-光合成産物分配の様相は,品種による塊茎肥大特性の違いをよく反映しており,品種に特有のソース・シンク単位の存在を示していた.