抄録
根径に着目した根系形態の解析方法を新たに考案し, 水稲品種ヒノヒカリの根系形成経過を調査するとともに, 出穂期における40品種の根系形態を比較した.解析に当たっては, まず根系の形態を画像化し, そのデータを用いてパイプモデル理論に基づいた根系の'仮想パイプ'を作成した.次に, その仮想パイプを基にして根径階級毎の根体積分布図を作成し, 根体積の分布の中央となる根径値を示す'平均根径指数'を算出した.また, 幼穂形成期以降において, 同分布図でみた根系が太根群と細根群とに分かれたので, 全根体積に占める細根群の体積割合を示す'細根率', ならびに各根群の根体積分布の中央の根径値を示す'太根根径指数'と'細根根径指数'を指標として利用して解析した.その結果, 生育に伴う水稲の根体積の増加パターンが明らかとなり, 根径と根体積から見た根系構造を捉えることができた.すなわち, ヒノヒカリの根系は約0.4mmの根径を境界階級とし, 主として冠根からなる太根群と主として側根からなる細根群に二分され, 各根群ともに根体積が最も多い特定の根径階級が存在して, それら二つの根径階級および境界となる根径階級は, 幼穂形成期以降においてより顕在化することが明らかとなった.また, 根体積の根径階級別分布を特徴づける平均根径指数, 太根根径指数と細根根径指数, および細根率は, 根系の生育に伴う変化や品種間差異を示す指標となると考えられた.