日本作物学会紀事
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栄養生長期におけるイネの維持呼吸速度の品種間差異が乾物生産に及ぼす影響(作物生理・細胞工学)
平井 儀彦津田 誠江内田 篤
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2002 年 71 巻 1 号 p. 110-115

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抄録

栄養生長期のイネでは維持呼吸速度が小さいと純光合成速度が大きくなると考えられる.そこで,飢餓法により栄養生長期のイネ26品種における茎葉部の維持呼吸速度の品種間差異を調査するとともに,維持呼吸速度に差がみられた8品種については自然条件下における乾物生産と暗呼吸速度との関係を調べた.その結果,茎葉部の維持呼吸速度には品種間差異が認められた.自然日射条件における暗呼吸速度は,飢餓法による維持呼吸速度が低い品種(台農67号,江曽島糯,Binato,Mangasa)の平均値が,高い品種(坊主,Dular,マンゲツモチ,Alborio)の平均値よりも低い値を示した.また,総光合成速度は,飢餓法による維持呼吸速度の低い4品種の平均値が,高い4品種の平均値よりも低かったにもかかわらず,純光合成速度は逆に維持呼吸速度の低い品種で高かった.これは,総光合成速度の5%に相当する維持呼吸速度の品種群間の差が,維持呼吸速度の低い品種の純光合成速度の向上に貢献したためと考えられた.以上より,維持呼吸速度の品種間差異の評価には飢餓法は有効であること,栄養生長期のイネの維持呼吸速度には品種間差異が認められること,さらに,栄養生長期では維持呼吸速度の差異が乾物生産の品種間差異をもたらすことが定量的に示された.

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