抄録
極早生から晩生までの主要な8品種を用いて,1999年の登熟期間中の高温,寡照が米の食味と理化学的特性に及ぼした影響について検討した.1999年産米は登熟期間中の気温,日照時間がともに平年並みであった1996年および高温で日照時間が平年並みであった1998年産米と比較して,千粒重は軽く,粒厚2.0mm以上の玄米の割合は低く,米粒の充実が不良であった.理化学的特性は,アミロース含有率,ブレークダウンは低下し,タンパク質含有率,テクスチャー特性値のH/A3が増加していた.1994年以降の各年次の千粒重とアミロース含有率は正の相関が認められ,1995年以降の各年次の千粒重とタンパク質含有率には負の相関が認められた.このことから,米粒の充実が不良であると,アミロース含有率は減少し,タンパク質含有率は増加すると考えられ,1999年産米の理化学的特性の特徴は,主として寡照の影響により米粒の充実が劣ったためと考えられた.その結果,1999年産米は,1996年産米及び1998年産米に比較して食味も低下したものと推察された.