2017 年 41 巻 4 号 p. 154-160
本研究では,S錐体刺激値の差を手掛かりとした視覚探索課題にて,3色覚と強度異常3色覚の視覚探索時間を測定し,比較した.13個の円盤からなる刺激を用いた.13個の円盤のうち12個は妨害刺激であり,妨害刺激にはS錐体刺激値のみが異なる2色を6個ずつ割り当てた.残りの1個の円盤は目標刺激であり,そのS錐体刺激値は,2色の妨害刺激の中間となるように設定した.刺激の呈示時間をパラメータとして,被験者に呈示した.被験者の課題は,ひとつの円盤のみに割り当てられた色(目標刺激)がどの象限にあったかを回答することであった.72.4%の正答率を与える呈示時間を呈示時間閾値として算出し,3色覚と強度異常3色覚で比較したところ,3色覚の呈示時間閾値は強度異常3色覚と同程度となる,あるいは長くなることが明らかになった.このことから,強度異常3色覚や2色覚は,色に関するあらゆる課題において,3色覚よりも劣っているわけではないことが示唆された.