日本色彩学会誌
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暈繝彩色に見られる日本的特徴 ─その日中の比較より─
北嶋 秀子
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キーワード: 暈繝彩色, 平面的, 装飾的
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2018 年 42 巻 1 号 p. 15-

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抄録

 暈繝彩色は7 世紀に中国からわが国へ伝来した彩色技法である.主に仏教的なものに使用され,「鮮やかな多彩感」や「立体感」を表す.中国と日本の暈繝彩色は,同じ画材,同じ描法であるにも関わらず,違いが認められる.敦煌莫高窟に代表される中国の暈繝彩色は「立体感」を,それに対して日本の場合は,「鮮やかな多彩感」を重視した.その結果,日本の暈繝彩色は平面的で,その後装飾的なものになったと考えられる.

 本稿ではもともと立体感を表す彩色技法であった暈繝彩色が,なぜ日本では平面的で,後に装飾的になったのかを考察した.奈良時代までは立体感を帯びた暈繝彩色であったが,徐々に日本独自の暈繝彩色へと変容する.そこには当時の平面的な絵画(仏画)の影響があり,その変容の時期は,密教請来との関係が考えられる.

 8 世紀に立体的であった暈繝彩色は,9 世紀の過渡期を経て,10 世紀に平面的になった.そして11 世紀の平等院鳳凰堂では,平安貴族の耽美主義の影響により,装飾性を重視した暈繝彩色へ推移したと考えられる.日本の暈繝彩色で「鮮やかな多彩感」をどこよりも発揮しているのが,平等院鳳凰堂である.

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© 2018 一般社団法人 日本色彩学会
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