日本色彩学会誌
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ゲーテの色覚異常観察法
馬場 靖人
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キーワード: ゲーテ, 色覚異常, 色盲, 青色盲
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2018 年 42 巻 3+ 号 p. 118-

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抄録

 J. ドルトンによる歴史上初めての学問的な色覚異常論の発表から遅れること十余年,ゲーテは『色彩論』(1810年)を上梓する.彼はそのなかで色彩一般についての研究とは別に色覚異常についての研究も行なったが,その著書の出版に先立つ1790年代に,すでに色覚異常の被験者を相手に独自の実験を行なっていた.本発表では,W. イェーガーによるゲーテの色覚異常実験法についての研究やゲーテ自身の著作を参考にしつつ,ゲーテが行なった実験の仔細な内容を検討し,その実験からどのようにしてゲーテが有名な「青色盲」説を導き出したのかを論じる(彼は,現在では赤ないし緑の知覚機能の欠如として説明される(赤緑)色覚異常を「青」の欠如として説明し,彼の被験者を「青色盲」と名づけた).彼の行なった実験とは具体的には,(1)灰色のグラデーションの提示,(2)複数の色彩斑点による混同色の特定,(3)茶碗に色を塗りつける実験,(4)紙片に塗った色による実験――以上の四種である.これらの実験を再検討することによって,18世紀末‐19世紀初頭における色彩にまつわる技術や文化と色覚異常研究との関係性の一端を明らかにすることができるだろう.

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© 2018 一般社団法人 日本色彩学会
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