本研究は,物体の周囲の彩度が高い場合に物体の見えの彩度が低下する効果である色域拡大効果について明らかにすることを目的とする.実験では,自然画像をflower,wool,pumpkinの3種類用意した.それらを注視する要素のターゲット領域とそれ以外の背景領域に分け,ターゲット領域,背景領域にそれぞれ表面情報や形状情報を失わせる処理を独立に施し,各条件を組み合わせることによって実験刺激を作成した.これらの実験刺激を用いて,均一背景上のマッチング刺激がターゲット領域と同じ見えになる彩度を求めることで,自然画像の刺激の複雑さが色域拡大効果にどのような影響を与えるかを測定した.その結果,pumpkin画像において,他の画像より色域拡大効果が発生しやすかった.今回行った条件では,自然画像における色域拡大効果には画像依存性があり,ターゲット領域は単純で背景領域は物体のエッジなどの細かい情報があり,色分布がオリジナルに近似している際に最も色域拡大効果が大きいことが示唆された.