肌色は画像や照明の色再現において最も重要な再現対象である.しかし,肌色の見えはポイントメーキャップや衣服など空間的に近接した色(近接色)との同化・対比現象によって変化することが知られている.肌色と近接色の同化・対比現象の報告は近接色の種類や面積によって異なり,明らかになっていないことも多い.本研究では,様々な色相を有するスカーフで女性の顔(肌色)を囲った画像を用いて,肌色の見えの変化をSD法および一対比較法で評価し,肌色の見えに対する近接色の影響を考察した.実験の結果,肌色の見えは近接するスカーフ色の色相によって変化し,赤色および青色で「黄み」,黄色および緑色で「赤み」と評価されたことから,肌色の見えの変化は同化ではなく対比によって生じていることが明らかになった.肌色を近接色で取り囲んだ場合は対比現象が,肌色の内部に彩色を施したポイントメーキャップでは同化現象が確認されたことから,近接色が肌色の見えに与える影響は肌色と近接色の関係によって変化し,この関係によって同化・対比現象が逆転する可能性が示唆された.