2018 年 42 巻 3+ 号 p. 218-
現行の小学校の図画工作の指導要領では,造形や鑑賞などの美術的な側面に重きがおかれ,色については感覚や自分のイメージにとどまり,人間を取り巻く環境や社会生活にも関連する色の科学的な側面を学ぶ項目は見当たらない.一方,中学校の美術では,色の基礎を総合的に理解するために,教科書や資料集においても,三属性や色の対比といった,色彩学における基本的な知識に関する項目が一気に多くなり,小学校の図画工作での比較的自由で抽象的な学びからは大きな飛躍や隔たりがみられる.しかし,中学校の限られた授業時間数の中で,造形と同時に色に関する多くの用語や基礎知識をしくみから学び,理解することは容易でないことが推察される.知識のみの詰め込みがもたらす理科離れや色への苦手意識を生むなどの弊害も懸念される.本研究では,これらの色の学びの隔たりの問題を改善する対策の一つとして,新しい学習指導要領(平成29年公示,平成32年より実施)にもある,主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善)に着目し,初等・中等教育におけるアクティブラーニングを地域社会や家庭から支援する色彩ワークブックを提案する.