2018 年 42 巻 3+ 号 p. 220-
本研究では,インテリア壁面の色彩環境が,トレース作業時の効率や気分,感情など,心理面にどのような影響を及ぼしているのについて,高齢者14名(52~80歳,平均66.1歳)と若年者17名(19~32歳,平均22.4歳)との年齢層による比較を行った.9色(赤・橙・黄・緑・青・紫・赤紫・黒・ピンク)のタント紙を前面壁に張り付け,その前で幾何学模様のトレースを行い「好き,はかどる,楽しい,気分がいい,全体としてのプラス感情」の心理評価を5段階で回答してもらい,かつ作業後のそれぞれの色に対する感想を質問した.その結果,若年者は黒に対する評価値は全体にかなり低く,ピンクに対する評価は全体的に高かったが,高齢者は明度の低い青の評価が低く,赤紫に対する評価が全体に高かったことなどが分かった.高齢者については,全体的に「好き」な色が,他の心理評価にも影響しているように思われるが,若年者は,すべて高得点のピンクと,すべて低得点の黒以外の色は,色の好悪に関わらず,色に対する心理評価に大きな差がみられ,「好き」な色でも色によって,明度によって心理評価が分かれること等が判明した.