2018 年 42 巻 3+ 号 p. 28-
近年,コンピュータグラフィックスの分野において,現実物体のモデリングを用いた技術が活発に行われている.この際,色の測定には問題がある.カメラで撮影した画像から情報を抽出するのが一般的であるが,測定された値にはカメラの分光感度特性や照明などの環境に依存した情報が含まれる.そのため,測定された値は局所的なものであり,一般性に欠けるため,物体固有の色情報である分光反射率を測定する必要がある.本研究では,プロジェクタとデジタルカメラを用いて,物体固有の色情報である分光反射率の推定を行う.事前にカメラの分光感度を得る必要があるため,既知の分光反射率をもった色票に対し,プロジェクタを照明として用いることで多様な分光放射照度で照明し,その撮影画像の信号値よりカメラセンサーの分光感度測定を行った.また,デジタルカメラを測色に用いるためには広範囲な光強度に対応し,輝度や照度に対して線形となる信号値を得る必要があるため,複数の異なる露光時間で撮影した画像からHigh Dynamic Range Imageを作成した.その後に,得られたカメラの分光感度を用いて,カメラの分光感度測定で用いた色票の分光反射率推定を行い実測値との比較を行った.