2018 年 42 巻 3+ 号 p. 75-
筆者らはこれまで,主観的な代表色抽出によってアゲハチョウ科の色彩傾向を調査してきた(梯,笠松 2015).本研究ではより客観的なデータを得るため,類似画像検索技術を応用したアゲハチョウ科の色彩分析を目的とした.具体的には,Histogram Intersection(swain 1991)を用いて画像間の類似度を算出し,1-類似度を画像間の距離として階層的クラスター分析の変数に用い,108枚の蝶画像を分類した.各クラスターの画像群から,CIELChのヒストグラムを作成し,各属性の分布特性を分析した.その結果,主にL*とC*abの分布は50以下に集中し,二峰性分布では各峰のピーク間の色差ΔL*は50~90,ΔC*abは20~50または60~90であった.さらに,habの分布は30~120°または90~180°に集中し,二峰性分布でのΔH *abは60~150°または120~180°であった.これらの特徴をまとめると,アゲハチョウ科の蝶の色彩傾向は主に(1)低明度色や明度差が大きい配色が多く,段階的に明度が変化する. (2)低彩度色が多く,一部で彩度差が大きい.(3)色相は赤~黄緑や黄~青緑が多く,これらの補色がわずかに分布する.今後はより詳細な特徴を捉えるため,カテゴリカルカラーや三次元空間での分布傾向などについてさらなる分析を行う.