2018 年 42 巻 6+ 号 p. 13-
ディスプレイのような三原色による測色的色再現は,標準観測者の等色関数に基づいているため,実際の観測者が必ずしも設計者が意図した色を観測するとは限らない.この現象はオブザーバーメタメリズムと呼ばれ,原色の分光分布が狭帯域の広色域ディスプレイでは,このオブザーバーメタメリズムが現れやすいことが報告されている.標準観測者の等色関数との差を考えた場合,最も差があるのは,異常3色覚である.そこで,本研究では,原色の分光分布の帯域特性が異なるディスプレイを用いて3色覚と異常3色覚の色の見えを測定し,ディスプレイおよび色覚特性の違いによるオブザーバーメタメリズムの現れ方を比較,検討した.
その結果,広色域ディスプレイでの異常3色覚での測色値と色の見えとの差は,ΔEab*で30以上もあり,3色覚の3倍以上であった.さらに,AdobeRGB準拠の液晶ディスプレイでも20以上,sRGB準拠のCRTディスプレイでも15以上の色差が認められた. このことから,異常3色覚のオブザーバーメタメリズムは,ディスプレイの広色域化に伴い,より顕著になることが認められた.