日本色彩学会誌
Online ISSN : 2189-552X
Print ISSN : 0389-9357
ISSN-L : 0389-9357
日本色彩学会第50回全国大会[東京]ʼ19 発表論文集
Web 上の大規模データの解析による Moon & Spencer の色彩調和論における「美度」の妥当性の検証
吉賀 なお深井 英和
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 43 巻 3+ 号 p. 148-

詳細
抄録

数多くの色彩調和論が提案されてきたが,各色彩調和論の妥当性はほとんど検証されてこなかった.我々は,不特定多数のユーザが好みの色の組み合わせを自由に投稿でき,かつ不特定多数の第三者が評価することができるウェブサイトにおける,数百万に及ぶ投稿パレットデータから一部抽出した大規模なデータを解析することにより,色彩調和に関する解析を行っている.

本研究では,Moon & Spencerが定義した「美度」の妥当性を投稿パレットデータで検証した.Moon & Spencerはマンセル色空間における調和領域と曖昧領域を決定し,それらを基にした複雑性と秩序から「美度」を定義した.我々はMoon & Spencerの定義に従って美度を計算したうえで,投稿されたパレットデータと,ランダムに生成したパレットデータで美度の統計を比較した.

結果,投稿パレットがランダムパレットと比較して高い美度値の分布を持っており,Moon & Spencerが定義した美度に一定の妥当性が認められた.ところが,美度の値による調和と不調和について,定義されている閾値で分類すると,ランダムパレットの方が調和したものが多く,不調和したものが少ない結果となった.よって,調和と不調和を分類する閾値は再考の余地があると思われる.

著者関連情報
© 2019 一般社団法人 日本色彩学会
前の記事 次の記事
feedback
Top