日本色彩学会誌
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43 巻, 3+ 号
日本色彩学会第50 回全国大会[東京]’19 発表論文集
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日本色彩学会第50回全国大会[東京]ʼ19 発表論文集
  • 益満 大志, 溝上 陽子
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 1-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    自然画像において彩度の上昇(低下)と同時に輝度コントラストを上昇(低下)させると,彩度のみを上昇(低下)させた場合より自然に見える範囲が広がることが示されており,この知覚される自然さの違いが彩度の順応効果に影響を与える可能性がある.本研究では,彩度・明度コントラスト変調画像の組み合わせが画像の彩度順応効果に影響を与えるか検証した.実験では,異なる彩度・明度コントラストの組み合わせで変調した画像群に順応後,テスト画像の鮮やかさ知覚を測定した.結果,彩度のみを変調した画像(彩度変調刺激),彩度・明度ともに変調した画像(自然変調刺激)に順応した際は,同程度の順応効果が見られた.しかし,彩度の上昇に伴い明度コントラストを低下させた,不自然な画像(不自然変調刺激)に順応した際は,順応効果は小さくなった.テスト画像に彩度変調刺激,自然変調刺激,不自然変調刺激のいずれを用いても,結果の傾向は一貫していた.また,順応画像の主観的な自然さが高い刺激は順応効果が高かった.したがって,画像の鮮やかさに対する順応効果は,彩度・明度コントラスト変調による画像の自然さに影響を受けるといえる.

  • 秋葉 航太, 田中 緑, 堀内 隆彦
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 5-
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    今世紀に入って,哺乳動物の網膜の内側面に,錐体や桿体とは別の新たな光受容器である内因性光感受性網膜神経節細胞(以下,ipRGCと称す)が発見された.従来研究ではipRGCは概日リズムの調節などの非画像形成機能に影響を与えているとされてきたが,最近の研究において,明るさ知覚などの視知覚に影響を与えているという報告が増えている.本研究では,ipRGCが一般のディスプレイ再現に対する色知覚に与える影響を,実験的に検証することを目的とする.実験には,桿体の影響を抑制するために,高輝度液晶ディスプレイを用いた.X-Riteカラーチェッカーから,測色的な色再現の精度が良かった7色の色票を用いて,6000KのLED照明下で色票とディスプレイ上の再現色との間で知覚的カラーマッチングを実施した.10名の被験者に対する実験の結果,マッチングの結果は平均9.5のCIE⊿E色差となり,測色的な色再現と大きく異なる知覚結果となった.この結果から,ipRGCがディスプレイの色知覚に影響しているという仮説を立て,CIE XYZの各値をipRGCの吸収量で補正したXYZ補正式を導出した.補正式による⊿E色差は平均3.4と改善され,ipRGCを考慮したディスプレイ色再現の必要性を示唆する結果が得られた.

  • 酒井 英樹
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 7-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    睡眠中の光環境を記述する際,色温度や照度の値が使われるが,それらは開眼時の明所視における視覚特性に基づいたものである.睡眠中は閉眼しており,網膜に届く光は,まぶたを透過することで,その分光分布(色温度に影響する)や光束量(照度に影響する)が変化する.よって,睡眠中(閉眼時)の光環境を適切に記述するためには,まぶたの光透過率を知る必要がある.そこで,本研究では,両眼の開閉に応じて照度を増減させる照明装置を用いて,開眼時と閉眼時の明るさ感が一致する条件から,まぶたの光透過率を算出した.閉眼時の顔面照度を100 lxとして,開眼時に同じ明るさに感じるように被験者に照度を調整させた結果,被験者のべ33名の平均光透過率は,赤LED(ピーク波長630 nm)52.4%,黄LED(593 nm)26.2%,緑LED(515 nm)21.6%,青LED(460 nm)4.5%,白色LED(Tcp = 4188K, Ra 93)42.7%であった(光色名はLEDメーカーに基づく).これらの結果は,既往報告の光学機器によるまぶたの透過率測定値より大きな値であり,その要因について考察する.

  • 磯見 麻衣 , 酒井 英樹 , 伊與田 浩志
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 9-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    素材表面に感じる光沢感は,その素材で構成されている製品や空間の視覚的評価に大きな影響を持つ.しかし,光沢感は素材の特性だけで決まるものではなく,観察する際の照明条件によっても変わってくる.そこで,本研究では,面光源下と点光源下における光沢感の違いを明らかにすることを目的として,光沢感の主観評価実験を行った.鏡面光沢度や明度の異なる球体試料11種の光沢感を,面光源と点光源の下で被験者30名に評価させた.その結果,面光源・点光源とも,鏡面光沢度が高くなり,明度が低くなるほど,光沢感が高くなる傾向が見られたが,

    (1)面光源下と比較して,点光源下では,高光沢の表面のみ光沢感が増す(光沢比強調効果).

    (2)点光源下では,高光沢表面の明度による光沢感の感じ方の違いを抑える効果がある(光沢平滑化効果).

    ということがわかった.実験ではさらに,低光沢と高光沢の試料について,高級感,硬軟感,温冷感,軽重感,新旧感などの光沢感情を評価させたが,

    (3)点光源下の方がその光沢感情の違い(特に硬軟感・温冷感.高光沢試料ほど硬く,冷たい)が明確になった.

    これらの知見は,商品や空間を演出する際の照明設計の指針となる.

  • 田中 豪, 溝上 陽子
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 12-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    肌色は,健康状態や感情,人種などの情報を知る重要な手がかりとなる.Yoshikawa et al. (2012)は,平均明度が同じであっても, 赤みがかった肌は明るく,黄みがかった肌は暗く見える傾向があることを示した.ただし,実験刺激は日本人女性の平均顔と肌色であり,被験者も日本人であった.しかし,人間の肌色には多様性があり,人種などにより肌色の特性は異なる.本研究では,異なる人種の肌色に対しても,同様の明るさの知覚特性を示すかどうかを検証した.日本人女性の平均顔を用いて,コーカシアン,タイ人,アフリカンの平均的な肌色を再現した.各人種の肌色に対して色相角のみを変化させた評価刺激と明度のみを変化させたマッチング刺激を作成し,被験者は評価刺激の見えの明るさに一致するようマッチング刺激の明るさを調整した.明るさ知覚への色相や明度の影響を調べるためにタイ人,アフリカン,日本人に対しては明度を変化させた刺激も用意し,同様の実験を行った.その結果,いずれの肌色でも赤みがかった肌は明るく黄みがかった肌は暗く見える傾向となった.ただし,顔画像の明度が低くなると,この効果が小さくなることが分かった.

  • 山口 義隆, 吉田 那緒子, 谷 武晴
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 15-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    人の肌質感は,肌の表面で反射する光と肌の内部に入り内部を伝搬した上で出てくる光によって知覚されている.本研究では以前,可視化シミュレーション技術として,肌の表面反射光および内部反射光を扱い,さらにnm~cmオーダーの構造を一貫して計算するマルチスケール光学シミュレーション技術を構築した.しかし前述のシミュレーションでは,単色の均一な光学特性の変化で知覚できる肌質感(光沢感など)は再現できたが,シミや色むらなどを含む複雑な肌質感(透明感など)は再現できなかった.本稿では,ミクロ凹凸の変化を可視化できるマルチスケール光学シミュレーション技術を拡張し,肌・シミ・色むらなどの色情報をRGBの各チャンネルで多値化したマップを作成し,そこに多値の光学特性(BSSRDF)を付与して計算できるようマルチスケール光学シミュレーションを拡張した.本手法により,肌のシミや色むらの明暗分布が可視化できるようになった.本シミュレーションを透明感の見えの可視化へ適用した例を報告する.

  • 秋月 有紀, 大住 雅之
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 19-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    ショック状態や鬱血状態のような循環不全時には人間の皮膚色は変化するが,特にヘモグロビンの吸収に関与する500~600nmの範囲での分光反射率の変化が大きい.災害時を含めた救急医療ではこの皮膚色の変化を適切に把握することが必要であり,本研究ではそのための識別用光源の開発に向けて,皮膚サンプルの製作を試みている.本報告では,ウレタンを基材とした個々の顔料の分光反射特性のデータベースを作成し,コンピュータカラーマッチング(CCM)の手法を用いて顔料の調合比を算出して,実際の循環不全時の皮膚色と同じ分光反射率となる皮膚サンプルを作成した.顔料のデータベースは,12色の単色顔料,もしくは白色顔料と3 : 7で混合した二色顔料をウレタン基材に1, 3, 5%の濃度で混合し,反射率6.3%と89.4%の塗装面にそれぞれ200 μmの厚さで塗装したものを分光測色計CM-2600dで測定した結果で構成した.Kubelka-Munkの散乱吸収理論に基づく共著者が開発したCCMシステムを用い,実際の皮膚色の分光反射率との誤差が最小となり,かつそれとの色差⊿E*abが0に収束するような顔料調合比を算出した.

  • 角田 英俊 , 秋葉 教充 , 黒木 健郎 , 日比野 和人, 黒沢 健至 , 土屋 兼一 , 横田 亮 , 井元 大輔 , 平林 学人 , ...
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 21-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    指紋の同定は,犯罪捜査において最も有力な方法の一つであり,犯罪現場などに残された証拠物から指紋の形状を鮮明に得ることは重要である.指紋は通常は肉眼では見えないため,ニンヒドリン処理などの有色化処理によって指紋を可視化することが従来から広く行われている.しかし有色化後の指紋と,指紋が付着している背景物体の明るさや色が近い場合は,有色化処理後も指紋が背景に埋もれて視認困難となり証拠として活用できない場合が多い.そこで有色化処理後の指紋を画像化し,画像処理による指紋の鮮明化について検討した.ニンヒドリン処理により有色化した指紋を含む紙のRGBカラー画像をCIELAB色空間上に変換し,色相の周期性を利用して各画素の色相の値を明暗に対応させて画像表示することで指紋の鮮明化が可能な場合が存在した.鮮明化の余地が残った画像に対しては,RGB空間またはCIELAB空間において画像の三次元色情報の分布を主成分分析し,各主成分に対応する画像を表示したところ指紋を鮮明化することができた.本事例では,ほぼ反対方向の色相を持つ構造同士の分離により指紋が鮮明化されたことがわかった一方,指紋の色相に近い背景模様の分離には至らず課題が残った.

  • 佐々木 麻衣子 , 矢島 仁, 東 吉彦
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 24-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    短編文化記録映画「紅」は,化粧紅の製法を題材に制作した映像作品である.作品中で紹介する化粧紅とは純度の高いベニバナの紅色色素そのものであり,ベニバナ花弁から伝統的製法で精製されたものである.繊維等に染色されたベニバナ色素は緑から青色にかけての可視光を吸収し赤色蛍光を発することが知られており,また乾いた状態の新鮮な化粧紅は,明瞭な緑色金属光沢を呈する.映像作品では,これらの諸性質を持つ色材の特徴を伝えるために,色彩の確かさと優れた質感描写力を期待して映画用 35mmカラーネガフィルムを使用して記録した.しかし,その映像は期待に反し,緑色の光沢を有する紅猪口が,金色に写ってしまった.

    この発表は,乾燥した化粧紅の色彩をヒトの眼で観察される通りに写し取るために行った,フィルム撮影時のフィルターワークによる赤末域の感度コントロールの試みである.

  • 中川 貴
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 28-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    およそ1W以上の電力で光らせることのできる高出力表面実装型LED (以下,高出力チップLED)は,手作り装置に広く使われる砲弾型LEDに比べてやや加工が難しいものの,放熱板に直接半田付けすることで効率的に放熱することができる.そのため,輪郭のはっきりした影を作り出す点光源に近い単色光源や白色光源を簡単に実現することができる.筆者は,白色板の上に立てた細い柱を一つの方向から高出力チップLEDの白色光で照らすとともに,反対の方向から高出力チップLEDの赤や橙,黄,緑,青などの単色光で照らし,単色光の影が明瞭な補色に見えることを確認した.これはゲーテが「色彩論」に記載した「色を帯びた影」である.この「色を帯びた影」の実験装置は既にいろいろな構造のものが報告されているが,高出力チップLEDを使えば,色フィルタを使うことなく簡便に実現することができる.この発表では,パワーチップLEDを用いた「色を帯びた影」実験装置の具体的な製作方法を紹介するとともに,実際の装置を用いて,6通り程度の単色光源と白色光源の組み合わせで「色を帯びた影」を実演する.

  • 西川 恵 , 北岡 明佳
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 30-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    現在,美術館・博物館の展示では資料保存の観点から照度が50lx,150lxの照明が推奨されるが,日常生活照明が1000lx前後であることから,多くの展示で比較的暗い照明が用いられているといえる.しかし,作品の印象の観点からは遠藤(1979)が照度は高いほど絵画はより美しい,快い,動的な等と評価され,また,照明の色温度は絵画評価への効果は小さいとした.本研究では,照度と色温度による絵画の印象変化を検討することを目的に,遠藤(1979)より実際の展示に近い環境で実験を行い,絵画の美しさ,快さ等に加え,恐ろしさ,不気味さ等も検討した.本研究の結果から,遠藤(1979)でも示された美しい,快い,動的な評価に加え,好きな,安心する,興奮した,暖かい,うれしい評価が1350lx照明下で50lx,150lxより評価が高くなるとわかった.また,5000lx照明下では美しい絵画は明るいほどより美しく感じられる可能性が示唆されたが,今後より正確な検証が必要である.また,本研究でも美しさ,快さ,好ましさは色温度によって変化しなかったが,動的な,安心する等の評価は6500Kより3000Kで高くなった.絵画の恐ろしさ,不気味さ,さびしさを伝える展示ではより暗い,または,より青白い照明が印象の演出に効果的といえる.

  • 室屋 泰三
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 34-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    絵画画像をはじめとする色彩画像の色変化について,画面上のさまざまなスケールについての平均色差に着目し,完全正規直交系を用いることにより,画面上の大きさについて重複することなく,かつ,取りこぼすことがないような方法を構成した.さらに,使用する基底として画面上の色変化に適応した階段関数系を定義することにより,Haar-waveletと比して,色変化の特徴をより明確に捉えられる方法を提案した.これまでは明暗や彩度,a*値,b*値といった色成分ごとに階段関数系により展開した係数のパワースペクトルや統計量から特徴をとらえようとしてきたが,本発表では,展開係数の成すベクトルから画面上の色変化の特徴分析を試みる.例えば,画面上隣接する展開係数ベクトルの内積から「直交する色変化」や「色差空間上で類似の色変化」というような関係を見出すことが可能であり,このような関係から画面上の色の配置(隣接関係)を保存した分析方法を構成することができる.これまでに分析を試みてきたモネ,ゴッホ等80点の絵画作品について,提案方法により,絵画画像における作家の「個性」を計量的にとらえるかを検討する.

  • 筒井 亜湖
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 38-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,美術系大学生における色彩語彙の特徴と普及実態を,再生法によって確認した.18歳から25歳までの美術やデザインを専攻する日本人大学生297名に対して,色名の自由想起を求めた.平均想起色名数は33.1語(最大86語,最小5語)であり,想起色名総数は754語であった.一般成人210名を対象とした先行研究(近江,2007)における色名想起総数は300弱であったことから,美術系大学生に知られている色彩語彙は多岐にわたることがうかがわれた.色名想起率データは先行研究で確認されたのとほぼ同様の傾向を示し,基本色彩語に該当する色名が想起率の上位を占めるという結果であった.これは,我々が日常的に使用する色彩語彙が,色情報の認知的処理基盤である色カテゴリに強く規定されていることを反映している.しかし,細部には美術系大学生に特有の特徴や時代による変化なども認められた.

  • 日髙 杏子
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 41-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,色彩文化の視座よりイギリス国王ジョージ6世(Albert Frederick Arthur George, 1895-1952)の戴冠式に関する色彩計画について検討する.ブリティッシュカラーカウンシルは,これらのイベントの色彩計画を指揮していた.研究目的は,国家的式典とナショナリズムの表象としての伝統色との関係を明確にするためである.当時の写真,肖像画,風俗画や関連文献が一次資料である.特に,当時ヨーロッパ諸国で広まっていたナショナリズムの検討として,戴冠式の一環として行われた観艦式,園遊会,舞踏会も考察する.戴冠式で,色彩計画がどのように表現されていたのかを解き明かす.

    「イギリス伝統色」では染織見本が並び,戴冠式の色彩計画が示された.この見本に基づき,国旗ユニオンジャックの赤色,白色,青色を強調した配色,さらに国家の豊かさを表すための金色と銀色,そして北部ブリテン島スコットランド民族の象徴であるタータンという色彩計画が忠実に表象された.当時の駐英大使の妻,吉田雪子によるエッセイには,戴冠式衣裳の色彩についての描写がある.

    本研究は,JSPS科研費18K 11965(基盤研究C)「近代イギリスにおけるデザインのための色彩規格とナショナリズムの研究」によるものである.

  • 國本 学史
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 43-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    日本の色彩文化は,近代以前と近代以降において,顕著な違いが見られる程に変化している.端的に言えば,「西洋化」にともなう色彩文化の変化と言って良い.しかし,色名の変化については,近代化・西洋化という文脈において,漠然と言及されることが多い反面,具体的にどのような領域に西洋化の影響があり,いつ頃から変化を迎えているのか,という点はあまり明確になっていない.さらに,近代化・西洋化に伴う色名の変化がありつつも,近代以前から続く和漢の色名はその後も消失せず,アルファベット表記(英語やラテン語)で表記された色名の発音をカタカナで充てた色名や,アルファベット表記とカタカナ表記をと同時併記するもの,漢字・カタカナ・ひらがなの表記等が混在・併存し,今日でも外来語由来と思われる色名の表記に際して,明確な基準があるわけではない.しかし,ある程度の傾向のようなものは感じられるものである.本研究は近代化・西洋化として一義的に捉えられがちな日本近代の色彩語と文化変容について,色料の変化や教育における変化や,国語国字の問題等を参照し,色名の近代化の背景と歴史的経緯を整理する.

  • 吉村 耕治, 山田 有子
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 47-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
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    紅の訓読み「くれなゐ」は,「呉(くれ)」という国の「藍(あゐ)」(藍は染料の総称)の意で,中国から渡来した染料を意味する.紅は,紅花の汁で染めた赤色,つまり,鮮明な赤色を意味し,藍色ではない.中国では赤色が「めでたい色」として有名であるが,「紅白」という表現には特に「めでたい」という意味はなく,「吉事と凶事」を意味する.日本では古くから,日常(ケ)と非日常(ハレ)を区別する感性が見られ,紅白は中心の意味としてハレ(非日常)を象徴していることが多い.紅白の梅が,草木がよみがえる陰暦二月に咲くことにより「めでたさ」に繋がったという考えや,赤と白は天上界の色とする考えが,紅白のめでたさに繋がっている.紅白の意味と用法は,祝い事・めでたさが中心的意味の場合と,「対向する二つの配色」が中心的意味の場合の二種類に大別できる.「めでたさ」を表す場合には,必ず「紅白」が用いられるが,「対向する二つの配色」が中心的意味の場合は,赤白が用いられることがある.「紅白」の「紅」には,本来の「紅」だけでなく,「赤」の意味の場合もある.この意味の豊かさ・精神性と多義性に,日本語の色彩語の特性が反映されている.

  • 加藤 美子
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 51-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    これまで全国の景観計画におけるマンセル値を用いた色彩制限の研究では,景観計画内での色彩制限の分析と景観行政団体にアンケート調査を実施した.その結果, 色彩制限では文言やマンセル値を用いた計画が見られた.とりわけマンセル値を使用する計画では彩度に重視している傾向がみられ,色彩制限値を設定する際,その土地の背景となる自然環境は強く意識する必要がある,降水量・日照時間・湿度などの気候特性は,日光の注ぎ方や空気中の水分などが人間の色の知覚認識に大きな影響を与える.さらには気候がその土地の植生を決めるなど気象条件と地域の特徴は密接にかつ複雑に関連しており,気象条件から地域性との関係を明らかにするために多方面で実用化されている関口式による日本の気候区分を用いて,景観形成基準の値に差異がない計画の色彩制限値と気候特性の重回帰分析を行った.

    その結果,彩度・明度と気候区分の関係を見ると,日照時間が長い地域は彩度が高くなる傾向や,明度の最低値が高くなる傾向が見られるなど,気象条件の違いにより色相の彩度設定値が変化する傾向が見られた.

  • 牧野 暁世
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 55-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    地域ブランディングに資するための色彩計画手法の構築を目的とし,全国各地と同様に地方創生が喫緊の課題のひとつである鹿児島県を対象として実践的に検討した.地域ブランディングで活用する地域資源を由来とした色彩を「ローカルアイデンティティカラー(Local Identity color:LIカラー)」と命名し,その特徴として「意味付与型」,「地域らしい色」,「ユーザビリティ」,「地域協働」を備えるものと設定した.地域資源を選定し,対象の性質に応じて,機械測色,視感測色印象調査のいずれかの方法を用い,マンセル値を算出した.これまでに収録した色彩の総称を「かごんまの色」と命名し,地域の方々の投票協力を得て,138色の「かごんまの色」の順位を明らかにした.今後は地域の方々から「かごんまの色」について様々な意見をいただき,それを踏まえて愛着や誇りを持って活用してもらえるようなカラーガイドの策定を進めていく.これらをまとめた際,地域の方々から評価を受けて改善につなげたい.

  • 杉山 朗子
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 59-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    景観法の策定は進んだが,その中の色彩基準は歴史的な地区のないところでは地域性が感じられない傾向があると指摘されてきた.一方,色が地域性に関与しているという研究もあり,さらに地域ブランディングとういう観点で見ると,「多様な地域資源」を捉えて景観計画に反映させている自治体では,地域らしさを活かした取り組みがみられるという.そこで現地での測色による調査を改めて見直した.「多様な地域資源」という考え方は「自然環境色」「社会環境色」「文化環境色」の分類で整理できると思われる.大学で実施した,残したい色のアンケートや配色ワークでのコメントの整理からも,自然.社会.文化それぞれに関わる色が意識されていることがわかった.また,年齢も専門も異なる市民によるワークショップでも,色彩のツールを用いると,参加者がみんなで同時に見られる共通の叩き台ができるため,色についての討議や検討が容易になることがわかってきた.このような方法によって地域色を把握し,効果的に活用していきたい.景観計画の見直しや,公共施設や広告のガイドラインを策定するような機会がある際に,是非,現地の調査やワークショップに取り組むことを推奨したい.

  • 齊藤 美雪
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 63-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    幼児教育から企業での人材教育までの教育において,AIによって刻々と変わる社会の仕組みが変わり,文部科学省でも2014年から教育改革が遂行されているが,大人はこれまで受けてきた教育方法しかわからないため,今の固定概念や常識を一旦クリアにし,柔軟性を持つ必要性があると考える.一方的に教える教育から,自らが考えて創り出していける柔軟な人材の教育へと移行していくことがこれかの教育者には必須だ.しかし,企業においても教育現場においても新しい人材の育成や教育にどう対応していったらいいのかを模索しているのが現状.人間の行動は,意識的な行動は2-4%であり,無意識による行動は96-98%であるため,無意識下に働きかけることが必須である.

    無意識の知覚や行動は,背骨にある自律神経系が司っているため,自律神経に働きかけるには振動(周波数)を活用するしか手段はない.そこで,幼児教育や企業研修に関わる教育者対象に,色・音・光を使った教材によってどのような変化が起こるかを実験した.

  • 櫻井 将人
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 67-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    色の味覚的な印象は報告されており,食品パッケージなどのデザインへの活用が考えられる.先行研究において,単色による味覚的な印象が調査され,色の三属性において,甘みは赤系の色相,酸味は黄色系の色相で彩度の上昇により感じられ,苦味は明度の低下に伴い感じられることを報告している(M. Sakurai et al., AIC2015, 348-353, 2015).しかし,食品パッケージに使用されている色は単色であることが少ないため,複数色が配色された場合も調査する必要があると考えられる.そこで,本研究では,配色による色刺激の味覚的な印象を明らかにし,パッケージデザインを支援するツールに適用することを目的として,2色で配色された色刺激に対して,基本5味(甘味,酸味,苦味,塩味,旨味)の印象を主観評価により調査した.結果として,単色において,甘味,酸味,塩味の印象が強かった2色で配色することで,それらの印象が強調することが分かった.また,単色において,味覚的な印象の異なる2色(例えば,甘味の印象の強い色と酸味の印象の強い色)で配色した色刺激は,各々の味覚的な印象が抑制される傾向の刺激もあった.これらの結果をもとに,食品パッケージデザイン支援ツールの検討を行なった.

  • 伊藤 納奈, 佐川 賢
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 69-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    アクセシブルデザインの技術資料として,産総研では色弱者の識別しやすい色の組み合わせを提案するため,基本色領域に関するデータ収集を行ってきた.このデータベースは,アンカーとなる基本色13色のそれぞれについて,類似と判定される色の範囲をマンセル表色系上に類似度別に領域で表すものである.被験者はすべて強度の色弱者で,1型2色覚者29名,2型2色覚者30名に対して,マンセル色票の色の組み合わせ対して,類似性の判定を行い,その判定に基づいて基本色領域の一般的特性を明らかにした.測定した基本色領域は,1型および2型2色覚とも,マンセル表色系上で赤/緑方向に引き伸ばされた形となり,色弱者が赤と緑の識別が悪いことを示している.ただし,赤と緑の基本色領域は完全には一致せず,ある識別度の範囲で識別可能であることも判明した.さらに,赤・緑方向に引き伸ばされた方向は1型および2型で異なり,色度図の混同色線やパネルD15の1型2型タイプ判定基準の方法とも対応する結果となった.これらの結果から,アクセシブルデザインに有用な色の組み合わせ法を異なる3段階の識別度に応じて提案することができた.

  • 粟野 由美, 金澤 律子
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 71-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    色彩は造形芸術の基盤要素であり,美術・デザイン教育において様々な教授法が研究,実践されてきた.しかし第三次産業革命を通してデザイン実務へのデジタル技術浸透が進み,そこへ人材を送り出す造形芸術系の教育現場もそれに対応した再編と,授業運営の効率化を推進する選択の結果,絵具を使う色彩演習は減少した.第四次産業革命へと移りゆく「脳化社会」を生きるデジタル・ネイティブ世代の造形芸術系学生は却って現実の物理空間における物体の振る舞いや人間の知覚をよく理解しなければならない.これらに鑑み,造形基礎科目再編の機に「手で探索し思考する色彩演習」を企画し,「色のデッサン」をテーマに体感と観察を基本に据えて,それを色彩学の基礎知識と応用技能に誘導するプログラムを構想した.本稿では,皮膚感覚を通して多様な材質を実感し色彩と戯れる演習の成果物を事例とし,学生の意識変化と学びの有効性を検討した.自然の振る舞いに少し人間が介在する技法での造形実験は観察からの気づきを促すのに有効で,実材ゆえのはがゆさも自然を味方につけた歓びもその時の感情と一緒に記憶され,意欲向上と創造力の発展に寄与すると評価できる.

  • Xiao Hong Zheng, Ping Fang
    原稿種別: Supplement
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 75-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    Taoism is the only local religion in China, whose aesthetic philosophy takes up an important part in Chinese traditional aesthetic philosophy. In Taoism, cyan has been given a very special meaning, carrying Taoism’s core idea. Along the revolution of history, its aesthetic value has been influenced by the aesthetic ideas of the ancients. Thus, from the perspective of traditional culture, the particularity and representativeness of cyan make it valuable to be further explored in the field of modern fashion design.

    The thesis suggests that perceptual impulses be supplemented by rational usage and the constant spiritual core be discovered under the versatile surface of design. Thus, it urges the emergence of new meaning and applications of cyan under globalization.

  • Sifan Zuo, XiaoHong Zheng
    原稿種別: Supplement
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 79-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    Peking Opera costumes are rich in color, and black is a spot color that becomes a certain type or a specific character. This paper attempts to explain the cultural significance of black in Beijing opera and its reasons for the traceability of black in Beijing opera.

  • Baniani Mahshid
    原稿種別: Supplement
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 83-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    The purpose of this study was to explore how adults and children perceive colors. During the 3-task experiment, first a questionnaire regarding subjects’ color preferences was prepared. Next, they were presented with 8 emotional facial expressions, each presented in 11 colors and were asked to select the most appropriate answer. Finally, they were presented with 11 color card boards(same colors as task 2)and were asked to rate how they feel about the represented color. Yellow was associated with happiness and blue with sadness(P<0.05).Children associated black with all the negative facial emotions(P<0.05).57.5% of the children associated white with unhappy, although white was a preferred color for bedroom for all the subjects(P<0.01).

  • Nischanade Panitanang, Chanprapha Phuangsuwan, Mitsuo Ikeda
    原稿種別: Supplement
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 86-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    Due to the diversity of Thai cultures, dialects, and environments that vary according to the regions, causing questions about the color names in Thai. 330 Munsell color chips were employed to obtain the color names used by 100 subjects(25 people per each region)using categorical method with monolexemic term. There was a similar mean number of color term usage in each region. Considering the consistency of the color name used by ≥80% of subjects found 12 color names, these included 11 basic color terms of Berlin and Key(1969)plus "Fa"(Sky)that was used by 100% of subjects for all region. There for, “Fa” might be added as the basic color name for the 12th of Thailand.

  • 中川 登紀子
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 90-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,美容室等での髪色の提案に応用するために髪色と第一印象との関係を明らかにすることを目的とし,実験参加者の性別や年代別に髪色の印象評価結果を分析した.

    日本人女性の平均顔に明度6段階,色み8段階の髪色を合成した48通りの画像を作成し,実験参加者には,これらの画像の中から合計18の評価項目に当てはまる画像をそれぞれ3つまで選んでもらった.この結果,ほとんどすべての属性で「若々しい」「元気」「かわいい」「華やか」に高明度の髪色を,「大人っぽい」「落ち着いた」「エレガント」「渋い」に低明度の髪色を選ぶ傾向があったが,色みについては属性による差が現れた.女性は髪の明度・寒暖の両方に第一印象との一貫した関係性があるのに対し,男性は明度のみに関係性が現れた.また年齢が上がるにつれ,髪色の寒暖と印象評価の関係性が強くなる傾向が観察された.男女差の要因としては形重視・色重視の違いや,色覚の違い,年代差の要因としては,ファッションカラー経験の有無や,ヘアメイクアップの経験年数が印象評価形成に影響を及ぼしていることなどが考えられる.

  • 江良 智美
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 94-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    中高年男性を対象としたファッションは女性向けファッションと比較すると必ずしもバリエーションが豊富とはいえない.その原因には「男らしさ」に対する固定概念や働き方,ワーク・ライフ・バランスが大きく関係しており,心理学,男性学の観点から考察しても中高年男性とファッションの関係性の解明は喫緊の課題である.本研究は中高年男性を対象とした総合的なファッション研究の試論第一段階として,ファッションに関する色彩について対象者が日常的に感じる主観的な意見についての質的調査を試験的に行なった.結果,今後規模を拡大した調査研究を行うにあたっての諸問題を抽出できた.

  • 髙石 耕平, 今津 果歩子, 藤本 純子, 石川 智治, 奥田 紫乃, 阿山 みよし
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 97-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    本研究では上衣と下衣の対比印象の強さを「コントラスト・インパクト」と呼び,同じ印象の強さとなる無彩色刺激の輝度比でその定量化を行う.さらに感性評価及び柄の大きさや色との関係を明らかにすることを目的とする.

    呈示刺激としてシンプルなブラウスの上衣とスカートの下衣をミニボディに着せたものを用いた.花柄の布地は黒,赤,黄,緑,青系の大きい花柄,黒系の中,小サイズの花柄の計7種類,無地は白,グレイ1,グレイ2,黒(明度は9.5,7,4,1.5程度)の4種類を使用した.テスト刺激としては,上衣は花柄の7種類,下衣は無地の4種類を組み合わせた28種類を,対比印象の強さの尺度化用の対比刺激としては,上衣・下衣とも無地の4種類を上下同色となるものを除いて組み合わせた12種類を用いた.テスト刺激のコントラスト・インパクトを求めるための対比印象比較実験及びテスト刺激に対して6種の評価語を用いた感性評価実験を生活科学系と工学系の女子学生各5名の計10名で行った.

    無彩色の組合せと有彩色を含む組合せで別々に解析したところ,無彩色・有彩色の組合せ各々において,いくつかの感性評価語との間に強い相関が見られた.

  • 昆野 照美 , 柿山 浩一郎
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 99-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,「通常期間(平常時)」の衣服の色相と,一般的に緊張状態になると考えられる「テスト期間(緊張時)」の学生の通学時の衣服の色相に関して変化が起こるのではないかとの仮説を設定し,調査を行った.

    具体的には,学生の平常時(580名)と緊張時(372名)の衣服の色相データを入手することを目的に,ビデオカメラによる定点撮影の通行人調査を行った.そのデータを対象に,t検定による分析を行った.

    結果,色相に関して,上着衣は,テスト期間に有彩色が減る傾向にあり,緑は4%,紫みの青は3%減となった.逆に,白は増加傾向にあり,特に同じ天候で比較すると差が顕著に表れ,雨天時の上着衣の白については,23→43%と増加する傾向にあった.下着衣に関しては,テスト期間に緑が3%,白と黒も1%減った.逆に,橙は5%→7%の増加傾向にあった.

    また,全ての色相に対してχ2乗検定を行ったところ,上着衣の色相について,「通常期間」と「テスト期間」の色相の変化に有意差が認められた.以上から,学生の衣服の上色相については,平常時と緊張時の期間の違いによる色相の変化に関して一定の傾向があり,特に,白に関して特徴的な傾向が確認された.

  • 庄 怡, 阿部 楓子, 山本 早里
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 103-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,より優れた空間を創出するため,壁紙のデザイン手法を研究する.壁紙の配色と模様をもとに,部屋の雰囲気にあった壁紙の特徴を明らかにする.

    初めに,現在取り扱われている壁紙のカタログの現状調査を行った.実際に使われている色,色数,配色,パターンをもとに,18枚の壁紙を制作し,印象評価の実験を行い,それぞれの壁紙に対する印象の特徴をまとめた.今回の被験者は筑波大学の大学生20人である.

    カタログの現状調査から,壁紙は無地,幾何学模様,具象模様などの模様が利用されている.色数に関しては,1色,2色,3〜5色,または5色以上に分けられる.背景色は60%の壁紙はY〜YRの色を使っている.またはNは19%で,B系も5%を示している.

    印象評価実験の結果から,女性と男性の壁紙に対する印象に有意差があった.壁紙のデザインの色に関して,大人っぽいイメージを作りたい部屋に対して,無彩色のほうがふさわしい.暖かく,明るく,派手な,柔らかく,親しみやすいイメージには,Y系の色のほうがふさわしい.模様の面から,具象的な模様はより高級に感じられる.また,円の幾何学の模様は比較的柔らかく,親しみやすいイメージがある.

  • 戸倉 三和子
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 107-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    有彩色光が色の見えに与える影響の基礎的な知見を得ることを目的とし,有彩色照明下での色票の見え方に関する試行実験を行った.被験者は20名の大学生で,6畳ほどの実験室に2人1組で入室し,空間の印象評価と2色の色票の見えに関する主観評価を行った.照明は赤,青,緑,黄,白の5色とした.

    空間の印象評価では,赤色照明下で「落ち着かない」,「不快な」という回答が多く,既往研究と同様の結果を得た.頭痛や目の疲れに関する主観評価では,赤色照明に加え,青色照明も「(頭が)痛い」,「(目が)疲れている」という回答が多く,印象評価とは異なる結果を得た.色の見えに関する主観評価では,赤系統の色票を赤色照明下で見る場合,青系統の色票を青色照明下で見る場合に違いが分かりにくいという結果を得た.

    これらの結果から,有彩色照明下では照明と同系色の色の見えに与える影響が大きいことが示唆される.

  • 西村 和昇, 平井 経太, 堀内 隆彦
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 111-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いたVirtual Reality(VR)体験は,臨場感のある没入体験を可能にする.近年では,VRシミュレーションを用いた外科手術訓練などにも利用され,エンターテイメントに限らず,専門的分野においても広く普及している.VRの有用性やVR酔いのようなVR特有の症状に関する研究は多く行われているが,一方,現実空間とVR空間における見えの違いを詳細に調査した例は少ない.我々は先行研究において,通常のデスクトップディスプレイとHMDにおける色の見えを調査するため,単色のパッチ画像刺激を用いた主観評価実験を行った.その結果,HMD上ではデスクトップディスプレイより明度と彩度が高く知覚される可能性が示唆された.そこで,次のステップとして,本研究では,現実空間を再現したシーン画像を用いた場合でも,デスクトップディスプレイとHMDにおいて色の見えが異なるかを調査した.実験結果より,シーン画像を用いた場合でも,HMDによる再現の方が,明度と彩度が高く知覚される可能性が示唆された.また,被験者によって注視する範囲が異なったにもかかわらず,明度と彩度は同様に高く知覚される結果が得られた.

  • 槙   究, 森田 和奏 , 山村 里奈
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 113-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    e-commerce取引の増大に伴い注目を集めるトピックとして,実物と画像の色の違いがある.本研究では,色の違いが気になるのはどういう時かという視点から,iPhoneで衣料品の画像を撮影してみる予備的な調査に続き,標準画像をAdobe Photoshopを使用してL*方向,a*方向,b*方向に段階的に色を変更した画像を作成し,どの画像までの色の違いを許容できるかを訊ねる実験を実施した.

    予備的調査での撮影画像と実物の比較では,電球色でも黒は黒に見えるが,白は生成りのように見える,青などの低明度色は黒っぽく見えるといったコメントが得られた.

    色の変移の許容範囲は,配色カード,セーター,バッグ,靴の画像に対して,それぞれ23色設定された基準画像毎にL*,a*,b*の各方向に- 9〜+9まで3ずつ変更した画像を作成して掲載したスライド276枚(=4×23×3)を作成し,それぞれについて20名の女子大学生が判断した.その結果,L*が3程度暗いのは気にならないことが多いがY系は他より気にする人が多い,a*方向よりb*方向で許容度が下がりやすいなどを示唆する結果が得られた.

  • Mitsuo Ikeda
    原稿種別: Supplement
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 117-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    If the simultaneous color contrast pattern is covered by a white tissue, a vivid color can be perceived for the test patch. we measured the perceived color by the elementary color naming method. The relationship between the color appearance of colored paper and that of the same paper with tissue showed desaturation of color with tissue without change of the apparent hue. The relation of the color appearance of the colored surround with tissue and that of the central test patch with tissue, when expressed by the apparent hue angle, was very similar to the relation found by the two-room technique, implying that the tissue was caused by the perception of illumination over the colored surround perceived through tissue.

  • Chanprapha Phuangsuwan, Mitsuo Ikeda
    原稿種別: Supplement
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 121-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    The simultaneous color contrast is a common subject in the study of color vision as it provides researchers with data from which they can speculate the visual mechanism for chromatic adaptation. In the study, however, people use different devices to present the stimulus pattern. It is possible that different devices give different data to draw different conclusions about the simultaneous color contrast. In this report the simultaneous color contrast is measured with five different devices, object mode, object covered with a tissue paper, display, projector, and two-rooms technique. Four surrounding colors, red, yellow, green, and blue were made same throughout devices. Apparent hue did not change much among devices but the amount of chromaticness of the central patch varied from 15 % to almost 70 % in the case of red surrounding depending on devices. We should not compare results of simultaneous color contrast directly if different devices were employed.

  • Siriwan Sonkaew, Chanprapha Phuangsuwan, Mitsuo Ikeda, Nischanade Pan ...
    原稿種別: Supplement
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 125-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    Color naming using 11 basic colors was conducted for 330 color chips of World Color Survey WCS by 60 Thai students of RMUTT in Patumthani, Thailand in an experimental booth of which illumination was white with illuminance 2644 lx. There were many responses beside the basic colors responded by the subjects. There were 25 color names beside 11 basic color names such as Fha(sky blue/light blue),Nue(skin tone),(indigo/dark blue)for example. But the most frequent response was “Fha” in Thai or “Sky”. We concluded that the color name “Fha” should be included in Thai basic color in addition to the eleven basic colors proposed by Berlin and Kay. We found no difference in responses between female and male.

  • Napasorn Wisestoom, Mitsuo Ikeda, Chanprapha Phuangsuwan
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 128-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    100 hue test was conducted under a normal lighting with fluorescent lamps and under a spot lighting composing of three LED lamps with a deep hood to eliminate environment light. Fifteen subjects participated in the experiment. Each subject did 100 hue test with cataract experiencing goggles to simulate elderly eyes. All the subjects gave better score with spot lighting than fluorescent lamp lighting. Mean error score was 197 with the spot lighting, whilst it was 215 with fluorescent lighting to show that spot lighting can present a better lighting environment to elderlies than normal lighting that radiates light.

  • 粟野 由美, 金澤 律子
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 131-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    色彩は造形芸術の基盤要素であり,美術・デザイン教育において様々な教授法が研究,実践されてきた.その進化のひとつの有り様として「手で探索し思考する色彩演習」を構想し,2011年から実践している.基本テーマは「色のデッサン」で,色を知覚する自分を観察し,視覚で捉えたクオリアを手で再現する演習,物理空間での質量を持つ物体としての色を触覚で経験し,視覚偏重から解放されたのちに視覚表現を構想しなおす演習などを重ねる.のびのびと表現する爽快感,目と手と心が一致する高揚感,気づきの愉しみ,自由の鍵となる知識という不自由への抵抗感,デジタル空間とは異なり意のままにならない重力場での判断など,成功体験も失敗体験もその時の感情と一緒に記憶することが重要である.制作課題はその仕掛けである.それぞれの成果物(履修生による課題作品)を最終的に本の形式にまとめることで個々の成果物が俯瞰でき,個別の制作時点では気づいていなかったことが経験と知識の積み重ねによって見えてくる.すると自身の成長も実感でき,達成感が今後の造形活動への意欲を増進させる.この傾向から,「手で探索し思考する色彩演習」の教育効果を評価できる.

  • 島田 由紀子, 大神 優子
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 135-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    幼児の自由画の使用色や構図,モチーフには性差があるが,色や構図はモチーフの影響を受ける可能性があり,技能を要する描画表現には個人差が大きい.そこで色シール作品から幼児の性差による平面表現の特徴を明らかにし,今後の造形活動の指導につなげることを研究の目的とする.

    幼稚園等の4・5歳児クラス134人(男児78,女児54)を対象とし,保育室で集団で実施した.課題は4×4の16枠を印刷した用紙に,2色の円形シールを貼る平面構成課題,2種類(青・ピンク,青・黄)であった.シールは各色5枚を配付し,使用枚数は自由とした.最後に青・ピンク・黄のうちの好きな色を尋ねた.

    シールを枠外に貼った幼児を除く88人(男児53,女児35)について男女比較を行った.好きな色は,男児は青,女児はピンクが多く,先行研究と共通性がみられた.しかし,課題中の各色の使用量には性差がなかった.シールの配置(構図)については対称性(線対称・点対称)には性差は見られなかったが,男児で中央4枠を全て埋める傾向が強く,男児のモチーフを強調する自由画との共通性がうかがえた.

  • 松田 博子, 名取 和幸 , 破田野" 智美
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 137-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    昨年度同様に,高年者と若年者の作業時の心理評価に及ぼす色彩の影響を検討した.9色(赤・橙・黄・緑・青・紫・赤紫・黒・ピンク)の色画用紙を用いて,机上面に色刺激を配置し,その上で写経を行い,「好き,はかどる,楽しい,気分がいい,全体としてのプラス評価」を5段階で回答してもらった.対象者は,高年者17名(52歳~80歳,男性2名,女性15名,平均年齢66.1歳)と若年者18名(女性18歳~20歳,平均年齢19歳)である.結果は年代(2条件)×色(9条件)の18条件で比較した.高年者は若年者に比べ,紫・赤紫・黒で,楽しさを高く評価し,若年者では紫や黒に比べ,ピンクの楽しさが高く評価された.高年者は総じて気分のよさを高く評価し,全体に緑は赤・紫・黒に比べ,気分のよさが高く評価された.また黄に比べて緑ははかどると評価された.高年者は若年者に比して紫・赤紫・青の明度の低い色でも心理評価が高かったが,若年者は,ピンク,橙・黄のような明度の高い色の評価が高く,明度の低い紫・赤紫・黒については気分が悪く,全体としてマイナス感情を示した.

  • 稲葉  隆
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 141-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    高齢者が手で触って使用する製品の表面はすべり落ちにくい加工がされるだけでなく,触り心地が良く感じられる工夫も重要である.そこで,表面の状態(粗さ)と色(製品色としてよく使われる白と黒)の関係によって触り心地に影響が生じるかを検討した.実験参加者は65歳から79歳までの男女計42名で,刺激は3種類の樹脂板(平らな面,浅いシボ加工された面,深いシボ加工された面)それぞれ白と黒の2色で計6枚を用いた.実験参加者は,刺激を指先で触り,粗さの度合い,触り心地の良さ,スマホやリモコンとしての使いやすさ・好き嫌いの4項目について7段階の尺度で評定した.評定項目ごとに色(2),表面状態(3)の2要因分散分析をおこなうと,触り心地の良さの評定において表面の状態の主効果が有意であり,色と表面の状態に交互作用が認められた.多重比較の結果,平らな面では白い樹脂板は黒いものより触り心地が良く評定され,深いシボをもつ面では黒い樹脂板が白いものより触り心地が良く評定される傾向があった.以上から,高齢者において色による触感(触り心地)への影響が示唆され,製品開発における色と表面加工のコーディネートの重要性が示された.

  • 梯 絵利奈, 村松 慶一, 日比野 治雄
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 144-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    筆者らはこれまで,蝶の色彩美に焦点を当て,特に美麗種の多いアゲハチョウ科の配色傾向を調査してきた.このための主な手法として,蝶画像を色の類似度で分類し,各クラスターの色彩分布を示すグラフから配色傾向を分析してきた(梯ら,2018; Kakehashi et al. 2018).本研究ではこれらのデータを統計的に処理するためにガウス混合モデル(Gaussian Mixture Model: GMM)による分析を試みた.GMMによって得られた結果を予め定義した配色型と比較したところ,主に次の三つの傾向が得られた.①明度コントラスト(低明度の面積の方が支配的),②類似彩度(低彩度の面積が支配的),③類似色相(橙~黄緑の面積が支配的).これらの結果はOu and Luo(2006)の実験的色彩調和論をはじめとした先行研究の結果のうち,equal hue, equal chroma, unequal lightnessと一致していた.

  • 吉賀 なお, 深井 英和
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 148-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    数多くの色彩調和論が提案されてきたが,各色彩調和論の妥当性はほとんど検証されてこなかった.我々は,不特定多数のユーザが好みの色の組み合わせを自由に投稿でき,かつ不特定多数の第三者が評価することができるウェブサイトにおける,数百万に及ぶ投稿パレットデータから一部抽出した大規模なデータを解析することにより,色彩調和に関する解析を行っている.

    本研究では,Moon & Spencerが定義した「美度」の妥当性を投稿パレットデータで検証した.Moon & Spencerはマンセル色空間における調和領域と曖昧領域を決定し,それらを基にした複雑性と秩序から「美度」を定義した.我々はMoon & Spencerの定義に従って美度を計算したうえで,投稿されたパレットデータと,ランダムに生成したパレットデータで美度の統計を比較した.

    結果,投稿パレットがランダムパレットと比較して高い美度値の分布を持っており,Moon & Spencerが定義した美度に一定の妥当性が認められた.ところが,美度の値による調和と不調和について,定義されている閾値で分類すると,ランダムパレットの方が調和したものが多く,不調和したものが少ない結果となった.よって,調和と不調和を分類する閾値は再考の余地があると思われる.

  • 吉村 由利香, 大江 猛
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 151-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    近年,店舗や家庭など多くの場所でLED照明が使用されているが,工業製品はD65などの基準光源下で製品色の企画や管理がなされていることが多く,LED照明光と基準光との製品色の違いを知りたいとの要望がある.しかし,異なる光源下で物体色の見え方を比較する場合,色順応補正が必要になる.そこで,本研究では,青色ダイオードと黄色蛍光体による白色LEDをモデル光源(試験光源)とし,これと同じ相関色温度のCIE昼光を基準光源として,これら光源間の物体色の比較における色順応の影響について検討した.まず,白色LED光源の黄色蛍光体ピークの幅を広げた分光分布をデジタル的に作成し,特殊演色評価数用試験色に対する演色評価数Ri値を算出した.次に,これらLED光源下における試験色の三刺激値を算出し,基準光からの偏差を算出した.その結果,色順応補正がされている演色評価数と三刺激値の偏差は直線関係を持ち,黄色蛍光体のピーク幅を大きくすると,Ri値が増大すると同時に三刺激値偏差が減少して,Ri値と三刺激値偏差の直線性の相関が高くなった.このような関係性が成り立つ場合には色順応の影響は少ないと考えられた.

  • 佐々木 柊 , 大河原 翔 , 金指 洸稀 , 三栖 貴行
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 155-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    近年,LED照明は様々な光色を調色・調光できる.フルカラーシーリングライトが販売されたことで,生活環境において有彩色光を利用できるようになった.本研究では,光の3原色と白色の4色についての照明光色が及ぼす体感温度への心理的・生理的影響について考察し,フルカラーLEDシーリングライトの活用方法を見出すことを目的とする.

    実験室は10.5畳の部屋で,ベッドやテレビなどを置き一般的な家庭の一室を模した部屋を用意した.被験者は神奈川工科大学に通う色覚正常な男子7名女子7名で行った.実験での評価項目は心理的評価のVAS(Visual Analogue Scale)と生理的評価のhitoeによるストレス指標LF/HFの測定,サーモグラフィカメラ(NECAvio製InfReC-R300S)による顔表面温度の測定を行った.照明光色はECHONET Liteを使用し制御を行った.使用する光色は光の3原色である赤,緑,青と白の4色とし,照度は光色の違いによる身体への影響を考察するため17[lx]に統一した.

    実験の結果,体感温度に関して人は心理的・生理的に光色の影響を受けていることが分かった.しかし,心理的に感じている光色の効果と生理的に起こっている光色の影響では異なることが分かった.

  • 林 涼介 , 森野 晃司 , 東 吉彦
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 159-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    印刷物の品質検査や色調評価には標準観察条件が用いられ,2000lx±250lxの照度が推奨されているが,そのような高い照度は日常生活では稀で,ほとんどは1000lx未満である.本研究では,印刷物の色評価に,2000lxという高い照度が必要なのかを検証した.

    我々は,500lx,1000lx,2000lxの3段階の照度条件で,色差の属性(色相,明度,彩度)に対する判別能力を調べた.被験者は色相,明度,彩度のいずれかが異なる2つの色票を観察し,それらのどれが違うかを判断して回答した.各照度条件下で,赤,黄,緑,青,紫の5つの色相ごとに,6種類の色票対を含む合計30種類のカードに対する判断を3回繰り返した.実験には,被験者として20代男女15名の学生が参加した.

    各照度条件における被験者の回答より正答率を求め,全被験者による平均を求めた.3つの照度条件を比較すると,傾向に大差はなく,正答率でも照度による違いはなかった.また,全ての照度条件で,青の正答率が最も低く,赤と黄の正答率が高かった.

    結論として,今回用いた3段階の照度条件では,照度による色差の属性判別への影響はほとんどないと考えられる.

  • 宮田 早絵, 奥田 紫乃
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 163-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    住宅や店舗などの室空間では,素材の異なる様々な自然素材の内装材が用いられ,使用される内装材の色彩や質感などの表面特性が室空間の印象に影響を与えている.また,照明光色の違いによって内装材の色の見えや質感が変化することが予測される.そこで本研究では自然素材の内装材を対象として,種々の照明条件下における内装材の色の見えの自然さ及び質感について評価させた.実験では,5種の木材,5種の石材,れんが,畳の12種の内装材を視対象とし,LED照明を用いて,相関色温度やduvの異なる20種の照明条件を設定して,内装材の色の見えの自然さ,光沢感,柔硬感,粗滑感,温冷感,及び好ましさを数値尺度で評価させた.その結果,チーク(木材)及びれんがでは4000Kでduv=-0.01のとき色の見えの自然さ評価が高く,3300Kでduv=+0.02のとき色の見えの自然さ評価が低かった.一方,大理石では6700Kでduv=-0.01のとき色の見えの自然さ評価が高く,3300Kでduv=+0.02のとき色の見えの自然さ評価が低かった.また,色の見えの自然さ評価と好ましさ評価との間には高い相関関係があることが明らかとなった.

  • 鄭 暁紅
    2019 年 43 巻 3+ 号 p. 165-
    発行日: 2019/05/01
    公開日: 2019/07/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,中国平潭島と同じ緯度における都市景観色彩の特徴を収集,それぞれ地域の色彩嗜好は景観色彩より分析し,景観色彩の影響因子(地理,気候,素材,文化,宗教,科学技術,都市開発など)を研究した.

    その色影響因子に基づき,中国平潭島の景観色彩を携帯型測色装置により調査や記録し,ソフトウェアにより特徴のある色彩を抽出し,クロマトグラフ分析図や地域景観色彩のクロマトグラフデータベースを作り,平潭島の都市景観色彩の特徴を研究する.

    中国平潭島の地域文化と地域特性に基づき,景観色彩システムを開発し,設計者や建築者向きに,推奨される景観色彩計画ガイドを開発し,平潭島の地域特色が強調され,創造性のある景観色彩の構成と開発を促進することを目的として,より標準化され調整され,地域特色に着目した景観色彩システムの研究を行った.

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